Roy Nachum インタビュー:リアーナのアートワークを手掛けたコンテンポラリーアーティスト
2017.08.30
リアーナのアルバム『Anti』のアートワークで、その名が瞬く間にアート業界の外にも知れ渡るようになったNYの画家・彫刻家のRoy Nachum(ロイ・ナカム)。六本木にオープンしたNY発のクラブ、『1 OAK TOKYO』の内装を夫人とともに「Mercer Project」というチームで手掛け、実はここ半年で日本に数回来日を果たしている。先日、ついにオープンの日を迎えた『1 OAK TOKYO』の会場でRoyをインタビュー。どこか闇を映し出したような作品から受ける印象とは裏腹に、気さくに質問に答えてくれた。
――――エルサレム生まれとのことですが、どのような環境で育ったのですか? アートはいつも身近にありましたか?
「5歳くらいから絵を描いたリ、美術館に行っていたよ。僕の父親がペインターだったからね。ペインティングを見ていつもエキサイトしていたよ。そして、将来は画家になりたいって思ってた。だからいつも絵を描いている人生だよ」
――――NYのアートの名門、クーパーユニオン (The Cooper Union for the Advancement of Science and Art)に留学した理由は? エルサレム在住でしたら、ヨーロッパのアート系の大学に行くという選択肢もあったかと思いますが。
「ベツレヘム(エルサレムの南に位置する都市)でアートを勉強していて、交換留学のプログラムがあったんだ。その中でクーパーユニオンが一番よかったんだ。それにNYに行って制作活動をするのがずっと夢だったからね。1,000人以上の学生の中から選ばれてクーパーに行けることになったんだ」
――――NYのアートシーンは競争が激しいかと思いますが、アートを制作する勉強だけでなく、アートビジネスに関しても学んだりしましたか?
「ビジネスについては特に学ばなかったよ。NYに来た時から今まで、どうやって自分自身を宣伝するのかとか、どうやって自分の絵を売っていくのかとか、あまり考えたことはなかったんだ。それはギャラリーに任せている。自分は自分のスタイルのある作品を作る事に専念してきた。そして、セレブリティが僕のアートを買ってくれたり、有名なアートコレクターが買ってくれたりして、彼らと友達になったり、恵まれた状況だったんだ」
――――一番最初にあなたの作品を買った、または仲良くなったセレブリティは誰ですか?
「レオナルド・デカプリオが一番最初に買ってくれたセレブリティだね。その後、共通の友達を通して、ジャスティン・ティンバーレークに会って親友になった。ジャスティンとは10年来の付き合いだね。JAY-Zやスウィズビーツ、アリシア・キーズ、リアーナも絵を買ってくれた」
――――そのリアーナとの仕事はいかがでしたか? 彼女から作品に対してアイディアやリクエストなどはあったのですか?
「JAY-Zのオフィスで僕の作品を見たそうなんだ。JAY-Zのオフィスには僕の作品が3点飾ってあるんだ。リアーナは新作のレコーディング中に真夜中に僕の作品をそこで見たらしくて、私が次に一緒に仕事をしたいのはこの人だわ!って思ったらしいんだ。リアーナとはとても気が合うし、好きなようにやらしてくれたよ。彼女は最初から最後までサポートしてくれたし、素晴らしいアーティストだし、一緒に仕事ができて本当によかったと思う」
――――あなたの作品は点字を使うことで知られています。点字をアートワークに使うことになったきっかけは?
「僕はずっと視覚をすごく大事にしてきた。ディテールまでよく見るし。子供の頃から視覚に関しては、常に自分の限界に挑戦してきた。だから、視覚がなくなることをとても恐れていたんだ。NYに最初に来た時、NYにはたくさんの人がいるのにも関わらず、孤独を感じていたんだ。それで、1週間目隠しをしてみることにしたんだ。視覚をなくしたらどんな感じになるのか、そして、全く新しい作品を作ってみたくてね。その経験でいろんなことをしてみることに開眼したんだ。それで、一番最初に制作したものが、真っ白にペイントしたキャンバスに白い点字のポエトリーを載せたものだったんだ。その作品はインタラクティブで誰でも触れることができるんだ。たくさんの人が点字に触れると、その部分が茶色くなっていくんだ。その色は時間を追うごとに濃くなっていくんだ」
――――あなたの作品は赤を象徴的に使っています。日本でも赤は国旗の色に使われており重要な色のひとつです。日本に来て、色彩の面で何か影響を受けましたか? 歌舞伎の舞台など観に行かれましたか?
「子供の頃から、夢を見るといつも赤だったんだ。だから、赤をたくさん使うんだ。いつも赤い夢を見るから、そのパーソナルな部分を外に出して作品に落とし込んでみたんだ。日本には3回来ていて、歌舞伎も観に行ったよ」
――――今でも夢に赤色が出て来るのですか?
「今でもだよ。子供の時からずっと。夢の中の色は赤一色なんだ。不思議だよ。白黒で夢を見る人もいるけれどもね。何かおかしいのかな(笑)」
――――『1 OAK TOKYO』の内装を奥様と一緒にMercer Projectとしてデザインしましたが、他の『1 OAK』の店舗と同じようにデザインしたのですか?
「僕たちが『1 OAK』をデザインする時は、アートインスタレーションのように捉えているんだ。その場所に足を運ぶごとに、何か違うディテールが目に入ってくるようにしているんだよ。見ている人に実験的状況を提供しているんだ。僕の作品はいつでも実験的なんだ。だから、内装のデザインをする時にもそうしている。足を踏み入れたら、何か特定なフィーリングを感じると思うんだ」
――――『1 OAK TOKYO』の内装に日本の文化を取り入れたりしましたか?
「アーチ(メインフロアの木の部分)を見てもらえば、分かると思うよ。でも、もっと左右対称でミニマルなものを作りたかったんだけどね。それと、日本の旗と同じ赤を使ってることだね。僕の一番好きな色でもあるし。子供の頃から日本の文化には影響を受けていたよ。イスラエルで勉強している時、日本によく行っている先生が、日本の話しをしてくれて、とても興味深かった。だから、このように日本で仕事ができて夢のようだよ」
――――エキシビションなど、これからの予定などあれば教えてください。
「ドバイでエキシビションをするよ。来年3月には香港、3月の終わりにはロンドンでもやるよ。あとは、NYでアートインスタレーションショウ、テレアビブではミュージアムショウもやる予定。いくつかはグループショウで、いくつかはソロショウで開催する」
Roy Nachum オフィシャルサイト
http://www.roynachum.com/
Special thanks : 1 OAK TOKYO
Text by Atsuko Akko Matsuda
writer: Atsuko Matsuda