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BAKIBAKIインタビュー:聖なる川、ガンジスのほとりで黄金に輝くBAKI柄巨大魚を描く

2020.04.06

日本の伝統模様である「麻の葉模様」をアップデートしたBAKI柄をシグニチャーモチーフに、国内外で活躍するアーティスト、BAKIBAKI氏。昨年11月に、ヒンドゥー教の聖地、バラナシで開催された壁画プロジェクトに、世界中から集まった8人のアーティストと参加。雄大な母なる川、ガンジス川の景色と見事に融合する、BAKI柄を配した迫力ある壁画を完成させた。大阪を拠点に活動するBAKIBAKI氏に今回のバラナシでのプロジェクトについて聞いてみた。

――先ずは、BAKIBAKIさんの活動歴を教えてください。

「もともと2001年にDOPPELという2人組で活動を始めて、2007年からはBAKIBAKIとしてソロで東京と京都で個展を始めました。DOPPELの時から今のBAKI柄を描いてましたね」

――最近はどんな活動をしていますか?

「最近は展覧会というよりは、PEYOTEとゆうクラブイベントのオーガナイズなどもしています。 5年前から大阪に拠点を移していて、今は祖父がやっていた鉄工場を十三光スタジオと称して、壁画をかけるスペースを作って、色んなアーティストと共に壁画を描いています。そんな感じで大阪を拠点に、今回のインドであったり、お呼びがあればいろんな場所に壁画を描いたり、ライブペイントをしに行ってます。

TITI FERAK, COOKONE, BAKIBAKI in 十三光スタジオ2018

――東京でも昨年展示をしていましたよね?

「はい、新宿のBar URACUE というバーで展示をやりました」

――今回の「Varanasi Art Project」に参加した経緯を教えてください。

「インスタグラム経由でインドの方から、バラナシというインドの京都のような一番古い街で行われるプロジェクトに日本人として招待したいと連絡がありました。ガンジス川沿いにストリートアートを描いて賑やかにしていくという趣旨でした」

――Mojartという組織が主催していますが、企業なども結構絡んでいるのでしょうか?

「イラストレーターのキュレーションやコーディネーションをしている会社で、プロジェクト自体はインド政府から助成金を受けつつ、企業からもスポンサードされて行ったようです。パブリックアートというプロジェクトでガンジスを浄化するという大義でやっていると思います。運営サイドの持ち出しも多そうですがお金結構かかっていたと思いますよ」

――ひとことで言うとどんな経験でしたか?

「今までいろんな国に行った中でも一番印象的というか…。普通に動物が町中街中にウロウロしていて、人間も動物なんだなってシンプルに思ったりとか。動物とか自然とかの一部分として人が機能している街なのが印象的でした。絵も街の一部として歓迎してくれて。僕を呼んでくれた人たちが宿とかご飯も用意してくれていたので、一銭もお金を持たずに行きました。描く壁は結構な大きさで、言葉もそうだし、画材についてもそうだったんですけど、凄い不安も多かったんですよね。時間のルーズさとかも含めて。海外に描きに行くときは、限られた時間でできるかどうかが不安で、そう言う意味ではバラナシが今までで一番ハードな環境でしたね。でも、完成することができて、自分の自信にも繋がりましたね。ガンジス川のほとりで描いたんですけど、日本人として呼んでもらって描けたのがとても光栄でした。凄くメモリアルな経験になりましたね」

――コンセプトなどはあらかじめリクエストみたいなものはあったのですか?

「鯉の絵を僕が日本で描いていたのを見てくれていて、ガンジス川に鯉と似た金色の魚がいるので、こういうのはどうですか? と向こうから提案があって。でも、大きな魚を描くには、壁の材質とかいろいろ制約はあったのですが、求められているし、それで行きますということで。結果、満足するものが描けましたね」

――何日間描けてやりました? やはり、インドということで苦労は多そうですが。

「滞在は10日間くらいで、壁画を描いたのは4、5日くらいなんですけど…。着いた日には下地が塗れるはずだったのですが、2日くらい待つことになって。マスキングテープとスプレーを使って描くんですけど、日本から持って行く分に加えて向こうでも調達しなければいけなくて、それで1日かかって。スプレーも使うってあらかじめ言ってあるのに、それが届くのに2日かかかって。やりたいけどやれないっていう状況もあったりしたけど、それを含め修行みたいな感じで。でも、それも海外あるあるなんで。そういうことは慣れっこだし、行けるだけでありがたいです。でも、どの国に行っても、日本人はハードワーカーって言われますね。海外の人は気楽に遊びながらやっているけども、日本人は几帳面というか高い完成度を求めるというか。僕もやれる時は目一杯やってという感じでした」

――番楽しかった思い出は何ですか?

「向こうの人はお酒を飲まないんですよ。なので、前半はストイックにやって、後半はお酒をのみに連れて行ってくれて。反動でめちゃハッチャケてしまいましたね(笑)。川沿いに描いていたので、後半にガンジス川にボートで出て、遠くから自分の絵を見たときに感動しましたね。ガンジス川の水位が上がると、自分の魚の絵もすっぽり隠れるそうなんですよ。そういう時も、また行って見てみたいなーと。逆に大変だったのは、食あたりですね。ストリートでご飯食べたらあかんでって言われてたんですけど、ある程度旅も慣れてきたら油断してしまって。バラナシではみんなチキンを食べないので、シークレットチキンディナーがある時に呼ばれて行って、プレートの中にガンジス川で獲れた魚が入っていたようで、あたってしまいましたね。一晩下しまくって大変でしたが、薬でなんとかなりました。悪いものが全部出てスッキリした気分でしたね。魚の絵を描いてたので、洗礼かなと(笑)」

―――インドはミューラルの広告も多いですが、職業で広告的なものを書いている人ではなく、グラフィティアーティストみたいな人はいるのですか?

「僕が描いていたバラナシにはいなかったですが、インドでもデリーとか他の街に行ったら、いるかと思います。バラナシはある意味京都と近いというか。伝統を自然に重んじているというか。街の景観が守られている気がしますね」

――今回の経験は今後の活動にどのような影響を与えると思いますか?

「お金じゃないところでのプロップスというか、バラナシのガンジス川のほとりに描けたということは凄い名誉なことだし、今回のこのインタビューも含め、それに反応していただいた方もいるのが嬉しいですし。日本人でバラナシ行った人から、壁画見たよって言われると、他の場所よりちょっと嬉しいってのがありますね。特別な場所っていうか、バラナシの景色は天国っぽいというか。浮世離れした感じもあって。そこに作品を残せたこと自体も嬉しいし、それに反応してもらえることも嬉しいです」

――バラナシに行く方にはぜひ見に行って欲しいですね。

「観光スポットからはちょっと外れたところにあるのですが、ぜひ行ってみてください」

――今後の活動の予定を教えてください。

「仕事をこなしていきつつ、今大阪拠点に活動していて、2025年に大阪万博があるので、そこに向けてアーティストとして何かやりたいなという気持ちがあります。Expo70の太陽の塔があるエリア出身なんで思い入れがあって、それに向けて今年から動いて行きたいなと思っています」

writer: Atsuko Matsuda