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Momo インタビュー:意識と無意識の中間でドットに命を吹き込むMomoが、”YOKAI”をテーマに個展を開催

2024.02.07

オーストラリアの先住民たちが制作するアート、アボリジナルアートにインスピレーションを受けてドット(点描)で作品を描くようになったMomo。爪楊枝で描くという細かなドットは、観る者の心、観る角度や距離によって、まるで違う生き物のように見えてくる。2月7日にスタートする個展に先駆け、これまでの経歴、今回のコンセプトについて話を聞いた。

 

ーー先ずは自己紹介をお願いします。出身はどちらですか? 絵を描き始めたのはいつ頃ですか?

「出身は千葉県習志野市です。物心ついた時から絵を描いてました。母がよく話す私が子供の頃の話があるんですけど、素敵な和食屋さんで地域の集まりがあった時に、私が掛け軸に落書きをしてしまったらしいんです。大変なことになったって(笑)」

――それは大変ですね(笑)。子供の頃に絵が好きで描いていても、中学、高校生になるにつれてあまり描かなくなってしまう人もいると思いますが、Momoさんが何がモチベーションとなって描き続けていたのですか?

「他のことにあまり興味がなかったんです。運動も好きじゃなかったし、部活にも入ることもなく、休み時間もずっと友達と絵を描いてました。それを両親もポジティブに受け止めてくれて、絵を習わせてくれました」

――大学は美大ですよね?

「武蔵野美術大学のデザイン学科です。基礎デザイン学科だったので、デザインという名前がついたものを比較的まんべんなく学ぶ学科で、グラフィックもあれば、空間もあれば、映像もあれば、WEBもありました。その中でも立体と空間はあまり得意ではなくて、グラフィックや映像を作るのが好きでした。ビジュアル系のデザインをメインにやってましたね」

――就職はされたのですか?

「就活するタイミングでリーマンショックがあり、結構たくさん受けたんですけど、1つも受からなかったんです。ちょっとなめてて、どこでもいけるのではって思っていたんですけどね。友達もほとんど就職しないで卒業でした。それで、私はアパレルでバイトをして、そのままアパレルの社員になって、絵も描き続けていました」

――その頃はどんな絵を描いていたんですか?

「ペインティングが日本でそんなに売れるとは思っていなかったので、スマホケースに直接絵を描いて、それを売るというのをなんとなく始めてました。ミンネとかクリーマというハンドメイドの作家さんが出品するサイトに出して、それがちょこちょこ売れていました」

――その頃はどんなビジュアルのスタイルだったのですか?

「抽象的なパターンのものを描いてましたね。マリメッコみたいな。絵になっているというよりかは、幾何学で図になっているようなものですね」

――今描かれているものの原型になっているのですね。その頃にアボジリアルアートに出会ったのですか?

「グッズを作るちょっと前ですね。スマホケースを作っている時もドットで描いていたんです。武蔵美を卒業してちょっと経った時にアボジリアルアートを見て、ドットかっこいいなって思って、真似しながらスマホケースに描いていました」

――それはいつ頃ですか?

「卒業したのが2011年なので、10年くらい前ですね」

――ドット歴長いんですね! その頃はドットを描くときは何を使っているのですか?

「いろいろ試したんですけど、爪楊枝に落ち着きました。今でも爪楊枝を使っています」

――アボリニアルアートは彼らの精神性に基づいた内面が表現されていることが多いと思いますが、Momoさんの作品は内面が出たものですか? それとも外のものを観察したものに基づいてますか? または、その組み合わせとか。

「おそらく、結論から言うとミックスだと思います。自分の中に残っている実際に見たものと、内側から出てきたもののミックスですね。私の場合はこうしようと思ってそこに向かって絵を描いていくというよりかは、自然とそうなっていくというプロセスです。ドットを打つという性質上、こうしようと思っても、なかなかそうならないんです。意識と無意識の中間を行っているイメージです」

――とてつもない集中力が必要ですよね。

「集中している時はぶっ続けで4、5時間くらいやりますね。どうしても、休憩取らないと首とか肩とかがおかしくなってくるので、休憩を取ってやってます。とはいえ、5、6時間が限界ですね」

――気分がいい時と落ち込んでいる時、どちらが集中しやすいですか?

「私は調子がいい時の方が集中しやすいですね。あと、色をすごく大事にしてて、太陽の光がないと色がよくわからなくなってしまうんです。なので、暗くなってきちゃうと絵が描けないんです。今の時期だと3時から4時くらいまでですね。雨の日はなるべく描かないで、別の作業をします」

――今、色の話が出ましたが、色の組み合わせがとても印象的です。どんなところからインスピレーションを得ているのでしょうか?

「よく聞いていただくのですが、何かを見てそれを引用してるということはないんです。その形、その面積に最適な色があるということが、私にはある気がするんです。それが最初に浮かんできて、それをまず置いてみようということで置くと、次はその色に対して、こんな形のこの色って、指令が降りてくるっていうか」

――普通に生活していたら見ることがない色の組み合わせで、とても引き込まれます。

「私の絵の場合はすごくたくさん色を使っているのですが、どれか一つを目立たせたいというよりは、全部の色が綺麗に見える色の合わせをすごく意識しています。人間もそうだと思いますが、色も一人では存在できないんですよね。どの色と隣り合うとこの色が綺麗に見えるとかというのを大事にしているんです。色を置いてみてじっくりみて、一人でも「俺が俺が」って前に出てきていたら、違う色に変えたりします」

ーー今回のテーマ、YOKAIについて教えてください。YONEさん(米原康正)のリクエストだそうですね? 「いい!」って思いましたか?

「思いました。言われた時は、すぐに理由はわからなかったんですけど、とにかくしっくりくるなと思って。最初に去年の6月にYONEさんから連絡いただいて、ずっと妖怪について考えてました。去年の11月頃から、妖怪ってこうだわってわかってきましたね(笑)。妖怪ってドットで描くのに最適なテーマだなと。何かっぽいものに見えるんだけども、近くで見ると点と色の集合体で、あるようでないという曖昧なところが妖怪っぽいというか。悪い奴でもいい奴でもないみたいなものとマッチする気がして」

――一つ一つの作品に〜の妖怪みたいなイメージがあるわけではないですよね?

「妖怪っていうと、水木先生(水木しげる)をはじめキャラクターのイメージが強いですよね。一反もめんとか、ぬらりひょんとか。私が考える妖怪は人によっては全然違う解釈をするものであってもいいのかなと思って。もともと昔の日本人が考えてた妖怪ってそういうのじゃないかなと。同じような妖怪を地域ごとに違う名前で呼んだり、違う容姿だと解釈していることもあるんじゃないかなと思いっています」

ーー観る人によって何の妖怪に見えるのか変わるのかもしれないですね! 今回、YOKAIを描いてみて、今後のアイディアが湧いてきたりしましたか?

「最初の方は見方によっては動物っぽく見える妖怪が出てきたのですが、後半は人間っぽい要素が出てきたりして、今まで人間をモチーフとして観察したたことがなかったので、今後、人間っぽいものもやれたら面白いのかなと、ちょっと思っています」

 

【プロフィール】
Momo
千葉県生まれ。オーストラリアの先住民が描く アポリジナルアートに魅了され、独自の ドットペインティングで作品を制作している。

【開催概要】

タイトル:Momo個展”YOKAI”

会期:2024年2月7日(水)〜3月5日(火)  ※2/20(火)は全館休業

会場:阪急メンズ東京 +DA.YO.NE.GALLERY (東京都千代田区有楽町2-5-1 阪急メンズ東京7階)

時間:平日12:00~20:00 土日祝11:00~20:00

<OPENING RECEPTION>
日時:2024年2月10日(土)17:00から
場所:阪急メンズ東京7階 +DA.YO.NE.GALLERY

writer: Atsuko Matsuda