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GEORGE BAYER インタビュー:自身のアルターエゴ = Le Chatが、時空を超えて旅するストーリーを描くアーティスト

2023.11.13

父親の仕事の関係で幼少時代を世界各地で過ごし、アートスクールを卒業後はテレビやフィルムの制作で世界中を飛び回り、それらの経験で培った独自の感性で作品を作り出すアーティスト、ジョージ・ベイヤー。90年代に6年間を過ごした日本では坂本龍一やサザンオールスターズのプロジェクトにも関わった経歴を持つ彼が、11月17日より原宿のtHE GALLERY HARAJUKUにて個展を開催する。本展のテーマは「Le Chat(フランス語で猫)」。アール・デコから1940〜50年代の広告やポスターを連想させるイメージまで、様々な時代やシチュエーションを纏ったLe Chatが私たちを迎えてくれる。来日中の彼に電話で話を聞いた。

 

You Ask The Chat

 

ーー出身地やバックグランドを教えてください。

「僕の父親がアメリカの空軍勤務で、母親がイギリス人で、イギリスで育ったんだ。だから、僕の英語にはイギリス訛りがあるんだ。イギリス人の奥さんもいたし、厳密に言えばイギリス人だね。さっきも言ったように、父親が空軍だったから、いろんな国で過ごしたよ。両親が離婚したのもあって、あちこちで暮らしたね。子供の頃は、一ヶ所に6ヶ月以上は住んだことがないよ。だから、僕はクレイジーなんだ(笑)」

――他にはどこに住んだことがあるのですか?

「スペインに3年、イタリアに4年、ロシアやアフガニスタン、ドバイ、アブダビ…。世界中だね。だから、どんな国の人ともうまくやっていける自信があるよ」

――日本に住んでいたこともあるそうですね。

「80代終わりから90年代にかけて日本に住んでたんだ。10年前にもNHKのプロジェクトで日本に数週間滞在したよ。80年代はロサンジェルスに住んでて、フィルムメーカーとして、多くのミュージシャンたちのMVを作っていたんだ。その頃に映画、『戦場のメリークリスマス』を観て、坂本龍一の音楽にとても感銘を受けて、坂本龍一のレコード会社を調べて電話したんだ。それで、坂本龍一の音楽が素晴らしいので、日本に行ったらお会いしたいって伝えたんだ。そしたら、マネージャーが空港まで迎えに来てくれて、その日の夜、高級レストランで坂本龍一に会うことになったんだよ。随分優しい人たちだなって。でも、話しているうちに、彼らが僕のことをシンプソンズの脚本家、ジョージ・マイヤーと勘違いしていたことが判明したんだ(笑)。坂本龍一がそれを凄く面白がって、そのあと、インクスティックバーに一緒に行って、僕たちは親友になったよ。YMOのメンバーの高橋幸宏も紹介してもらって、彼のビデオも手がけたし、彼のステージのセットのデザインもした。イッセイミヤケやヨージヤマモトも紹介してもらって、一緒に仕事をしたよ。日本には3ヶ月住む予定だったのが、結局、6年住むことになった。日本人のデザイナー/スタイリストの女性と結婚もしてね。サザンオールスターズの仕事もたくさんしたよ。(シンプソンの脚本家の)ジョージ・マイヤーと間違えられたことで、こんなことになるとはね」

 

The Daily Chat

 

――アートの制作をするようになったのはいつ頃でしょうか?

「15歳くらいの時にアメリカに住んでいた時、アートにとても興味を持っていて、その頃、学校の課外授業でNYに行ったんだ。それで、NYにいたくて、課外授業の帰りのバスには戻らず、しばらくストリートで暮らしていた(笑)。その後、カリフォルニア・インスティチュート・オブ・アーツ(LAに位置するアートの名門)に行って、タイラー・スクール・オブ・アーツで絵画と彫刻を勉強したんだ。実は、ローリー・アンダーソン(前衛芸術家、パフォーマー)と恋仲になった時があって、彼女がLAのインスティテュート・オブ・アーツで講義をしたのがきっかけで、そこに通うようになったんだ。映画学校にも行って、ビデオの制作もするようになった。そのうち段々とクリエイティブな仕事から、テレビのようなコマーシャルな仕事をするようになったんだ」

――今回の東京での個展は、「Le Chat Tokyo」というタイトルで猫をテーマにしていますが、何がきっかけで猫の作品を描くようになったのですか?

「30年前に日本に住んでいた時、手で紙をちぎって、招き猫を作っていたんだ。それから、どこかへ行くときはいつも、紙の猫を作ってみんなにプレゼントしていたんだ。バーで女の子に声かける時も猫を作っていたよ(笑)。TV関係の仕事をしているビジネスマンとして、出張で世界中を回っていたのだけど、みんな僕を紙で猫を作る人として知っていた。コロナが始まって、もうテレビの仕事からは離れて、もう一度昔のようにクリエイティブなことがしたいと思って、陶器を作るようになってたんだ。台湾で個展をしたら、それが上手く行って、アメリカに戻ってから絵を描くようになった。それがLe Chatなんだ。Le Chatは僕にとってはアイコン。Le Chatは男でもなければ、女でもない。ヒーローなんだ」

 

ちぎった紙で制作した招き猫

 

Ultra Chat

 

――いろんなイメージの猫がいますが、一貫性があるというか、見ていて落ち着く感じがします。

「そうなんだ。全ての作品に親しみやすさがあるんだ。でも、それぞれの作品の中で何か違うことが起きている。ワニと格闘していたり、バウハウスのスタイルだったり、いろんなシチュエーションやスタイルがある。今回は80あるプリントの中から60枚を選んで日本に持って来た。ディテールの細かいものもあって、2024年のLe Chatってことで、フワフワの毛の猫から龍に変身している作品もあるんだ。ユーモアと真面目さのコンビネーションだね。全ての作品に意味があるんだ」

――何故、フランス語なのでしょう?

「このシリーズは日本のために作ったんだ。30年前に日本に住んでいた時、いろんなものにフランス語の名前がついているのに気づいたんだ。フランス語はロマンティックな響きがあるからね。日本でオルセー美術館のプロジェクトに関わったり、仕事でもフランスに縁があってね。あと、映画「パルプフィクション」でサミュエル・ジャクソンがジョン・トラボルタに「ビッグマックはフランス語で何て言うんだ?」って聞くと、「ル・ビッグ・マックだよ」って答えるシーンがあるんだ。フランス語はロマンティックな響きがあって日本人に好まれるのと、パルプフィクションのシーンが印象的だったのとこの2つが理由だよ。作品に描かれいる文字にスマホをかざして、グーグルの翻訳アプリを使えば、日本語に訳してくれるから、作品の奥にあるストーリーがわかると思うよ」

 

Le Chat Japan New Year 2024

 

――Le Chatのシリーズはどんな画材を使って制作しているのですか?

「カットした紙と絵の具、日本の水彩絵の具などを使ってる。出来たものを写真で撮影して、パソコンに取り入れてスクリーンに写して、またそれを撮影して、透明のアセテートプラスティックにプリントしたりもする。それを水彩画の上に乗せているんだ。だから、立体的になっている」

ーーあなたにとって、Le Chatとは?

「子供の頃、引っ越しが多かったから、友達をたくさん作るのが難しかったんだ。動物が友達だった。だから、僕にとってLe Chatは、様々なことを表現するひとつの方法なんだ。僕とLe Chatはたくさんの経験をしている。僕は世界中を旅していて、僕がアフガニスタンに行ったら、Le Chatもアフガニスタンにいく。Le Chatは言ってみれば、僕のアルターエゴだね。Le Chatが旅しているところは、全て僕が訪れたことのあるところだよ」

――今後の予定を教えてください。

「この展示でツアーをしたいと思っているんだ。でも、他にたくさんアイディアがあり過ぎて、このままこれを続けるのか、やめて他のコレクションを作るのかが問題だ(笑)。次に考えてるのは、コラージュとペインティングのプロジェクトなんだ。でも、今は完全にLe Chatに入れ込んでいるよ。毎日、寝ても起きてもLe Chatと過ごしてるけど、まだまだ全てのアイディアを作品にできてないからね」

 

I Love You Very Much

 

【プロフィール】
国際的なアーティストであるジョージ・ベイヤー。
彼のキャリアは数十年に及び、世界のアートシーンにおける重要人物として知られる。
彼の芸術性は、日本、ロシア、アフガニスタン、中国、トルコ、台湾、ヨーロッパなど世界各地で形作られ、キューバ、シチリア、ロシア、アメリカから影響を受けた彼の多様な背景を反映して、作品を制作している。

80年代から90年代にかけての日本での経験は、彼の芸術の道に影響を多く与えた。
ビデオアーティスト、コンサートステージデザイナー、音楽プロデューサー、ミュージックビデオディレクター、そして、ファッションショー、コンサート、インタラクティブビデオプロジェクトのクリエイターとしての役割を探求した。日本のアーティストや企業とのコラボレーションは、彼の芸術の旅をより豊かなものにした。

50年にわたる政治的抗争、犠牲、回復力といった彼の生きた経験が作品に反映され、大胆な色彩、印象的なイメージやユーモアで作品が構築されている。また、フロリダの風景、アジアのトレンド、トルコの文化的タペストリー、中世のキャラクターの神秘性に根ざしている。

WEB:https://www.georgebayerartist.com
Instagram:@george.bayer.370

 

【開催概要】
タイトル:George Bayer Exhibition “Le Chat Tokyo”
場所:tHE GALLERY HARAJUKU(東京都渋谷区神宮前3丁目20-21 ベルウッド原宿1階-C)
期間:11月17日(金)~11月26日(日)
休廊日:月・火曜日
時間:11:00~19:00

■Opening Reception
日時:11月16日(木) 18:00〜
場所:tHE GALLERY HARAJUKU

writer: Atsuko Matsuda