ファナパスト・タイチャメールコール インタビュー:極彩色で描くおとぎ話の世界
2019.10.21
2017年にグッチの動物モチーフのジュエリーコレクション、「ル マルシェ デ メルヴェイユ」と連動したおとぎ話の本のイラストを手がけたことで、世界にその名が知られるようになったタイのアーティスト、ファナパスト・タイチャメールコール。インスタグラムがきっかけで世界キャンペーンに参加することになったという、SNS時代ならではのチャンスをつかんだアーティストだ。現在は、アパレルのクリエイティブディレクターとアーティストの二足のわらじでバンコクを拠点に活躍する彼女に、バックグラウンドや現在の活動についてメールでショートインタビューを行った。
————バックグラウンドを教えてください。
「1987年、タイのバンコクで生まれ。父が植物とペットが好きで、母は仕立て屋をしていたわ。私は一人っ子で育ちました」
————子供の頃はどんな子でしたか?
「生まれた時から男の子みたいに育ったけど、成長するにつれて女の子だって自覚していきました」
————何歳くらいの時にどんなきっかけで絵を描くようになったのですか?
「小さな頃から描いてました。母親の元で働いているお針子さんの甥のジェイという甥っ子に、家の絵を描くことを教えてもらったのがきっかけ。台形の屋根のある家で、日本式のドアがあって、アルファベットのVの中に鳥がいる絵を描いていました」
————他にはどんなものを描いてましたか? 動物とかお花とか?
「いろんなものを描いていましたね。動物とお花が一番のお気に入りでした」
————尊敬しているアーティストは?
「フリーダ・カーロです」
————学校でアートやデザインを学んだことは?
「チュラロンコン大学でファッションデザインを学びました」
————Klosetというブランドのクリエイティブデザイナーをされてますが、毎シーズンのコンセプトはあなたが考えるのですか?
「そうよ。最初にインスピレーションを探して、コンセプトを考えます。そのあと、雰囲気や色調も含めたコレクションのメインとなるスタイルを作ります」
————グッチの2017年のコレクションにフィーチャーされたきっかけを教えてください。
「その前年にグッチの担当者がインスタグラムで私の作品を見つけたのが始まり。実は、ル マルシェ デ メルヴェイユのジュエリーコレクションのためのおとぎ話しの本を作る前に、いくつかの小さいプロジェクトを一緒にやりました。おとぎ話しの本は、私がアートワークをやって、友人のAracha Cholitgulがストーリーを書きました」
————最近のプロジェクトについて教えてください。インスタグラムでバンコクの地下鉄に大きく描かれた迫力ある真っ赤なアートワークを拝見しました。あそこで写真を撮りたかったです。
「それは嬉しい! あのミューラルのインスタレーションは、ネスカフェとのコラボで、バンコクに新しくオープンしたWat Mangkornという地下鉄の駅をデコレートするっていうプロジェクトです。もし来るチャンスがあったら、ミューラルの中に入れ込んだARを試してみて下さい。スマホのアプリを使うと私のイラストがアニメになるんですよ」
————今一番行きたい国はどこですか? そこで何を見たいですか?
「日本! 京都の都踊りを見たい。あとは、宝塚歌劇も見てみたいです」
————ところで、タイのアートシーンはどんな感じでしょうか? あなたのように世界に進出していくチャンスに恵まれていますか? また、タイでアートバーゼルのような国際的なアートのイベントなどは開催されたりしますか?
「タイのアートシーンは成長中って感じです。以前より多くの人たちがアートに興味を持っていると思いますね。アートを勉強したいって言う子供に対しても、親が協力的になっていると思います。今のアーティストはSNSのおかげで昔に比べたらチャンスはあるのでは。でも、ちゃんと見てもらうためには、一貫して続けなければいけないし、作品に打ち込まなくてはいけないと思います。タイにはアートバーゼルはないけれど、去年初めてバンコクビエンナーレが開催されました。あとは、バンコク・デザインウィークも面白いですよ」
————これからの予定は?
「次の展覧会のことを考えています。ファッションとクラフトをミックスしたものをやりたいです」
writer: Atsuko Matsuda