原ナビィ インタビュー: 暴力の普遍性に強烈なインパクトでスポットライトを当てるアーティスト
2024.07.29
暴力的なシーンを漫画のような表現とインパクトのある色と筆使いで描くアーティスト、原ナビィ。原宿のtHE GALLERY OMOTESANDOにて開催する個展をひかえた彼女に、これまでの経歴や作品制作のインスピレーションの源について話を聞いた。
――出身はどちらですか? 2001年生まれということでデジタルネイティブと呼ばれる世代ですが、子供の頃は何に夢中になっていましたか?
「出身は三茶と下北の間あたりです。小さい時は、バービーとかの着せ替え人形が好きでしたね。今も昔のビンテージのバービーを集めています。人形がすごく好きなので」
――ビンテージのバービーはどこで購入しているのですか?
「お友達からもらったり、おばあちゃんからもらったりしています。あとは、フリーマーケットにも意外とあるんですよ」
――芸大で油絵を学んでいらっしゃいますが、芸大を目指したのはいつ頃ですか?
「高校二年生くらいに美術系の専門か大学に行けたらいいなと思っていました」
――最初から油絵を専攻していたのですか?
「最初はデザイン科を目指していました。就職するならデザインがいいよって言われたので。でも、高校三年生になってから、やっぱり油絵がいいなと思って、予備校での専攻を変えました」
――影響を受けたアーティイストはいますか?
「戸川純ちゃんが大好きでした。私の母親も好きだったみたいで。高校生の時はガロという漫画が好きでしたね。その時に流行っているものは、あんまり興味がなかったです。70年代、80年代の日本の音楽、ちょっと昔の日本の文化が好きでした」
――ナビィさんの作品を見ていると、よくわかります。
「漫画的表現がすごく好きなんです。漫画や音楽などサブカルチャー的なものが美術より好きでした。高校生の時は、美術というよりはカルチャーのことをよく調べていました」
――好きなバンドがあれば教えてください。
「赤痢っていうガールズバンドと戸川純さんですね。あとは、平沢進とか町田町蔵とかも聴いていました。音楽ではないですけど、ヤンキー文化も好きでした。ティーンズロードとか、暴走族やヤンキーが載っている雑誌を見てました」
――大学では西洋美術の油絵を学んだのですよね? 今の作品のスタイルになったきっかけはありますか?
「『殺し屋1イチ』っていうヤクザ vs 殺し屋のすごく面白い漫画があるんです。過激でグロテスクですが、愛と笑いがあって、私は勝手にラブコメディだと思っているんです。その漫画を元にして、自分の中で再設定して作り上げました」
――先生や同級生の反応はどうでしたか?
「サイズが大きかったので、みんな、デカっ!って驚いてました。色使いもインパクトがあったので(笑)。先生はすごい褒めてくれましたね。成績的には次席で、え! 私、成績よかったんだって(笑)」
――次席とは素晴らしいですね! 今のナビィさんのスタイルに名前を付けるとしたら、どんな名前を付けますか?
「暴力って特別なものというか、あまり日常にないものととらえてると思うんです。でも、私は普通でありふれたもので、普遍的なものだと思って、殴っている絵などを描いています。特別なものを普遍的に描きたいなと思っていて、それをどうやって伝えればいいのか、大学院でいろいろと学んでいます」
――暴力という行為にいたらなくても、人間はみんな内側に暴力的な感情みたいなものを持っていますよね。
「モヤモヤしたり、ありますよね。家で飼っているペットも本来は噛み付いてくる側なので、そういう関係性も面白いなと」
――大きいサイズの作品が多いですが、アイディア出し、下絵、完成時など、プロセスのどこの部分が好きですか?
「最初に何を描くか考える時と、描いている時が一番楽しいです。キャンバスを組み立てたり、布貼ったりする作業は、これがないと描けないのでとりあえずやるという感じです。それが終わった後に、大きい白い面を目の前にして、何描いたら面白いかなって考えるのが好きです。そのあとに絵を描く時が一番ノリノリですね」
――音楽かけながら描きますか?
「大きな絵はテンションあがる音楽聴いて小躍りしながら描きます。小さい絵ではできないですが(笑)」
――大きな作品は制作にどのくらいの時間がかかるのですか?
「卒業制作で描いたものは横の長さが9メートルで、それは2日くらいで描きました。学校に入れるのが8時か9時くらいで、夜は20時までいることができるので、その間ずっと描いています。疲れず、楽しくやりました」
――今回、tHE GALLERY OMOTESANDOで個展を開催することになったきっかけを教えてください。
「キュレーターのYONEさんが私の絵を前に買ってくださって。その時も少し話したのですが、あらためてお話をして、個展やりませんかと言われて、ぜひ!と」
――今回の個展のコンセプトを教えてください。
「タイトルは『キャットファイト』です(笑)。女性同士のキャーキャー言いいながらしている喧嘩のことなんですが、それをすごく強いイメージで描こうかなと。弱いイメージだったキャットファイトを強いスタイルで描いたら面白いかもしれないなと思っていて。日本だとあまり女性同士の喧嘩って見たことなくて、どちらかというと陰口とかが多いと思うんです。そして、暴力は日本だと男性メインというか。女性も男性も関係なく、暴力は普遍的にあるというのを表現するのにキャットファイトってすごくいいなと思ったんです。そういう動画を見るのも好きなので(笑)」
――表参道での個展以外に今後の予定があれば教えてください。
「8月にグループ展に参加します。2、3点出展します」
――アーティストのグッズやウォールアートなど、今後やってみたいプロジェクトはありますか?
「壁はやりたいですね! 音楽がすごい好きなので、ジャケットとかTシャツとかもできたら面白いですね」
【プロフィール】
原ナビィ
2001年 東京生まれ。
東京藝術大学院油画第1研究室在学中
暴力や怒りについて普遍的に描いています。
2020年都立高校卒業
2020年東京藝術大学油画入学
2024年東京藝術大学油画第1研究室入学
受賞歴
2021年 muni Art Award グランプリ、ビューワー賞受賞
2024年卒業制作 サロン・ド・プランタン賞、台東区長賞 受賞
2024年 art award tokyo marunouchi 入賞
主な展示歴
2022 個展 「ベリー・グウ 」GALLERY SCENA
2023年アートフェア東京
ART FAIR PHILIPPRNES
個展「HYSTERIA」Bohemian’s Guild Cage
2024年 アートフェア東京2024
個展 「はうる音」銀座 蔦屋書店 Bohemian’s Guild Cage
【開催概要】
タイトル:原ナビィ個展 「CAT FIGHT」
会期:2024年8月2日(金)〜2024年8月30日(日)
時間:12:00~19:00
会場:tHE GALLERY OMOTESANDO(東京都渋谷区神宮前5-16-13)
Instagram:@the_gallery_omotesando
writer: Atsuko Matsuda