KAMIインタビュー:HITOTZUKIとしても活動する、KAMIのソロのアーカイブ展が大盛況のうちに終了
2017.06.09
老巧化のために取り壊しが決まっている、中目黒に古くから残る一軒家=金目黒を会場に、5月26日から4日間限定で行なわれたアーティストKAMIのアートショウ『ARCHIVES』。1999年から現在までの作品を集めた、タイトルの通りのアーカイブ展には昔からの彼のスタイルを知る人々はもちろんこと、多くの若いファンも多数集まり、熱心に作品に魅入っていた。その展示最終となった5月29日の午後、KAMI本人にショートインタビューを敢行してみた。
ーー今回、アーカイブ展をやろうと思った理由は?
「自分の作品を1箇所に集めて保管しているんですけど、たまにそこに行って、昔描いたのを出してみたり、入れ替えで並べたりとかしてて。(これで展示をやったら)面白そうだなって思って。ここ何年かはSASUとのHITOTZUKIがメインになっていて、壁に描いたり展覧会をしたりしてきたけど、こうやって自分のソロでの過去の作品を見てもらう機会って最近なかなかなかったから、これは新鮮だなと。タイミング的にもがっつりハマったという」
ーーこの『ARCHIVES』は東京の前に、大阪でも開催していましたね?
「大阪での展示を知った、ここの主人(あるじ)から、『今月末でここが取り壊されるんで、その前にここでもやらない?』って。それが(5月頭の)大阪での展示最終日が終わって片付けもおわって、東京へ帰る日に連絡が来て。本当に急な話で、まあだいぶ無茶振りっすね(笑)。大阪も一人で車に作品積んで乗り込んで行った感じで、こういうシンプルな展示でも意外と結構エネルギー使うから、時間的にも厳しいなーって思ったんですけど、大阪で手応えを感じたのもあったし、中目黒もホームだし、みんなが面白がってくれたら良いかなって思って、やってみようって」
ーー今回の会場である金目黒について教えてください。
「もともと2000年から”赤目黒”っていうビンテージ家具屋があって、そこに自分もちょくちょく遊びに寄らせて貰ってたんですけど、そこが2013年に店を終了するってなった時に、友達の金(きん)ちゃんがその場所を引き継いで、ハンドメイド革製品の工房を始める事になって、名前も金目黒になり。それで自分も壁に描いたり、一緒にベルトを作ったり、金ちゃんも、自分含め身近なアーティスト達の作品を飾ったり、友達のTシャツ等を売っていたりしてて。昔、目黒銀座商店街にあってなくなっちゃった、大図実験(注:2001年から05年まであったギャラリー兼アーティストの集いのスペース=大図実験/DYEZU-EXPERIMENT!)のバイブスを感じれるというか、よく立ち寄る場所になっていて。僕も中目黒近辺に住んで20年になるんですけど、こういう昭和の名残があったりとか、居心地の良い懐かしいところがどんどんと無くなっていく中で、ここは数少ない落ち着く場所で。けど、今回ついにこの場所も無くなるっていうことで、ちょっと悲しくもあるんですけど」
ーー観に来ているお客さんの反応はいかがですか?
「結構、みんな喜んでくれて。自分はやり出した頃から現在まで経験は積んできているけども、ある意味、意識ってそんなに変わってはいなくて。自覚はそこまでなかったけど、気付いたら99年に描いたものでも、もう18年とかになるわけだから、自分たちが当たり前に知ってることでも、それを知らない世代の子がいっぱいいて。そういう人たちに観てもらう機会があるのは良かったなと。それから、同じジェネレーションの人達にも、自分が歩んできた時代と見てくれた人達の道のりとの交差があったり、それを振り返ってもらえる機会になれば面白いなって」
ーー過去の作品を並べてみて、自分自身で発見したことはありますか?
「99年の作品とか技術的には未熟なんだけども、フレッシュさというか、無知がゆえのエネルギーとかって、やっぱりすごいなって。今はそこには絶対に戻れないわけだし、そのエネルギーがすごいなって思っても、もうそうはなれないから。今は経験を積んで、色々な事を知った上で先に進んでいかないといけないわけだけど。準備しながら『あの時、みんなああやったな~』とか、いろいろ思い返したりもしましたね。それが何に繋がるかは、まだわからないですけど、結局やったことの意味とかっていつも後からついてくるのかなと思ったので、これを切っ掛けに何か新しい事に繋げていけると思いますね」
ーー過去の作品を観て、改めて感じたのは、実にいろいろなスタイルをやってきたんだなと。
「そうですね。どれもその時のコンプレックスが原動力になっているような気がします。例えば自分がいつものスタイルで描き続けていると、人にそれだけを求められて、それが続いてくると嫌になったりもして。それ以外もあるんだよっていう感情がやっぱり出てきたり、当時はイメージとか概念をぶっ壊したいとかそういう気持ちになって。昔はライブペイントとかでも、SASUとペンキをぶん投げたりとかめちゃめちゃなことを結構やってて。形だけじゃなくて、エモーションなんだよ!とか思ってたり。その時はあまり理解はされなかったですけども(苦笑)。でも、時を経てこうやって現物を同じタイムライン上に飾ってみると、そういう時期の自分が形に残っているっていうのも、今の作品にまた意味が出てくる。いつもの曲線のラインが自分のセンターの軸だとしたら、こっち逸れて、あっち逸れて、また元に戻ったりとかしてる。どれもこれも、その当時の自分の感情だったり、シーンの色んな流れに反応して生まれたものだから、振り返ってみた時に、時代も読み取れるし、自分のバロメーターにもなりますね」
ーーちなみに今後の予定は?
「やっぱ壁に描くことかな。HITOTZUKIでも新しい壁を描こうって話が盛り上がってきてるから、それをメイクして。一番落ち着くんだよね、壁の現場が。壁を描きながら、さらにまた新作をつくり続けてたいですね。今描いたものも、2027年になったら、それは10年前の作品になって残るから、振り返るのも楽しみだし、いつかHITOTZUKIも全部含めて全てを見せるような展示をしたいですね。いろいろ時を経て、時代で見る価値が変化していくのは、すごく面白いなって思うので、過去からの流れを含めて楽しんでもらいたいなと」
writer: Kiwamu Omae