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Will Sweeney インタビュー:Diesel Art Galleryにてソロエキシビションを開催中のグラフィック・アーティスト

2018.04.16

ロンドンを拠点に活動するグラフィックアーティスト、ウィル・スウィーニー。日本でも展開していたUKのアパレル、サイラスのグラフィックを手掛けたり、Undercoverともコラボレーションをしたりと日本との関係が深い彼が、11年ぶりにソロエキシビションをDiesel Art Galleryにて開催。3月2日よりスタートしているソロエキシビションのオープニングにかけつけたウィルに、エキシビションについて、今後について語ってもらった。

————まず始めに、簡単にバックグラウンドを教えて下さい。

「ウェストロンドンで生まれて、両親がオックスフォードに引っ越したから、そこで育ったんだ。それからリバプールのアートスクールに3年通って、ロンドンの学校でコミュニケーションの修士課程を終了した」

————どんな環境で育ったのですか? 絵を描き始めたきっかけは?

「両親がどちらともクリエイティブだったんだ。父親はアーティストで、プリントが専門だったんだけど、ペイントもドローイングもする。プリントや版画で知られていたけど。母親は彫刻を学んで、僕が子供の頃はラテックスでマスクを作っていたよ」

————ラテックスのマスクが家中にある環境って凄いですね…

「そうなんだよね。面白いだろう。子供の頃は父親のスタジオで遊んでたから、その辺にある紙とかに絵を描いていたんだよ」

————とてもいい環境で育ったんですね。

「ラッキーだったと思うよ」

————ペインティング、彫刻、アニメーションと様々な表現方法で作品を発表していますが、それらはどのように選んでいるのですか?

「ドローイングは自分のメインの表現方法。今回のショウでは大きい作品をもっと制作しようと思ったんだ。今まではディテールに凝った小さな作品が多かったからね。気の赴くままに自由に描きたかったんだ。制作に費やす時間も短して。絵を描く時は、材料が凄く大事なんだ。今回は水彩絵の具をたくさん使った。水彩絵の具は表情が豊かなんだ。あとは、日本のゲルマーカーもたくさん使ったよ。絵の具に見えるけど。反面、細いボールペンを使ってとてもデリケートな絵も描いた。そっちは顕微鏡で体の中や細胞を覗いてるような細かい絵なんだ」

————子供の頃からいつもアートに囲まれて自然に自身も絵を描きだしたとのことですが、その頃はどんな絵を描いていたのですか?

「子供の頃から騎士と甲冑にとても興味があって描いていたよ。暗い絵を描いていたから、先生や両親にも心配されていたね。でも、絵を描くことによって、そういった自分の中の暗い部分を外に吐き出していたと思う。大きくなってからは『ダンジョンズ&ドラゴンズ』のようなファンタジーなアートワークを描いていた。その後、NYから来たグラフィティにすごい影響された。一緒にやってきた音楽も自分にとってとても重要だったけど、グラフィティのラインやカラー、シンボルはとてもインパクトがあった。最近になって、あの時に本当にグラフィティに影響されていたんだなって改めて思ったよ」

————音楽の話しになりますが、80年代初めのイギリスのワイルド・バンチ・クルー周辺などのシーンは面白かったですよね。

「僕はオックスフォードに住んでいたんだけど、ロンドンに住んでいる友達を訪ねて遊びに行ったこともあるよ。まだ13歳だったから、いつもラジオでNYのHIP HOPを聴いていたよ。あの頃のロンドンとNYは関係が深かったと思う」

————では、今回の個展について聞きます。まずはタイトルの『VORPAL SWORD(ヴォーパル・ソード)』について教えて下さい。

「ルイス・キャロルの『鏡の国のアリス』に出て来る詩、『ジャバウォックの詩』に出て来る武器なんだ。イギリスでは有名な詩で、子供が読む詩なんだ。意味はなくてナンセンスで、不思議な気分になるんだ。とてもダークだよ。その詩の中でヴォーパル・ソードは不思議な力を持った武器でモンスターを倒すんだ。この武器をクリエイティブなエネルギーの比喩として使いたかったんだ。今回の作品がこのタイトルにフィットすると思ったんだ。不思議なエネルギー、クリエイティブなエネルギーがコンセプトだよ。そういった不思議なエネルギー、クリエイティブなエネルギーが武器となって、人々に重圧を与えるものと闘うんだ」

————展示を通して、特に伝えたいメッセージはありますか? また、ミュータントなどのキャラクターも描かれていて、反原発のメッセージもあるのかなと。

「うーん、というよりは、世界滅亡後というか、僕はイギリスの未来に対してとても悲観的な感情があるんだよね。今はイギリス社会の状況はますます悪くなっていて、この国では貧富の差がとても開いている。それについて何か知的なコメントをしたいわけではなく、僕がそれについてどんな感情を抱いているかを表現したかったんだ。あと、貧富の差がますます激しくなっていく未来に対しての恐怖心もね。僕たちは前に向かっていなくて、過去に戻っていると思う。だから、コンセプトを“レトロフューチャリスティック”にしたんだ。僕はずっと滅亡後の世界に興味があったしね。MAD MAXのような世界にね」

————前回日本に来たのはいつですか? 日本にたくさん友人がいるようですが。

「2016年の10月だよ。サイラスという日本にもディストリビュートされていたストリートウェアのグラフィックをたくさんやっていたから知り合いはたくさんいるよ。サイラスをやっていたから、アパレル関係の仕事がたくさん来るようになったんだ。あとはStussyでもグラフィックをやったことがあるよ。2003年にはパルコでショウもやった。その年に初めて日本に来たんだ。日本で奥さんと知り合って結婚もして子供もできたしね。だから、日本は2番目の故郷みたいなもんだよ」

————日本でやりたいことや見たいものなどありますか?

「今回は半分仕事で半分ホリデーって感じなんだ。2人の子供も連れて来ているし。だから、彼らと一緒に遊んで、日本の文化にも触れさせたい。あとは、ワタリウムでやっているマイク・ケリー展を観るのを楽しみにしてるよ(現在は終了)。他にも観たいエキシビションがあるよ」

————いろいろなクライアントと仕事をしていますが、自分の作品を自由に制作する時とクライアントからのオーダーで仕事をする時の一番の違いは?

「ラッキーはことに、僕のアイディアやスタイルが好きで仕事をオーダーしてくれるクライアントが多いんだ。レコードのジャケットなんかは、自由にやらせてくれて僕のいい所を引き出してくれる。だから、がんじがらめだと難しいね。イラストレーターであると同時にアーティストでもあるから。でも、フレキシブルにやるようにするよ。イラストレーターとして仕事をする時はリサーチもするんだけど、それも面白いって思ってるんだ。例えば、本のカバーなんかは本をちゃんと読んで、その人の解釈についても考えてみるんだ。ファッションはまた別で、ブランドについて考えて、そのアイテムに合うグラフィックを考えなければいけない。だから、難しいんだ。いつでも、どんな方向にも行けるように準備をしておかなければならない」

————最後に今回の見所を教えて下さい。

「新しいペインティングやドローイングがあって、アニメーションもある。あと、とても大きいタペストリーが2枚あるんだ。機械で編んだんだけど、クレイジーな仕上がりになってるよ。ショウケースの中には昔のスケッチやコラージュなんかも展示しているよ」

【開催概要】

タイトル: Vorpal Sword(ヴォーパル・ソード)

会期: 2018年3月2日(金)-5月24日(木)

会場:DIESEL ART GALLERY(DIESEL SHIBUYA内)

住所:東京都渋谷区渋谷1-23-16 cocoti B1F

電話番号: 03-6427-5955

開館時間: 11:30-21:00

休館日: 不定休

WEB: www.diesel.co.jp/art

 

Photos by : Miki Matsushima

Text: Atsuko Matsuda

writer: Atsuko Matsuda