INTERVIEW

HOME > INTERVIEW > Atelier506 > Atsuko Matsuda > SHAWN HOLLY インタビュー:ビジュアルアートへ活動の場を広げるハリウッドの敏腕衣装デザイナー

SHAWN HOLLY インタビュー:ビジュアルアートへ活動の場を広げるハリウッドの敏腕衣装デザイナー

2024.10.02

映画やTVドラマの衣装デザイナーとしてハリウット ゙で30年に渡り活躍するアーティスト、ショーン・ホリーが、10月5日より世界初の個展「 THE WEALTH / 共有」を原宿のtHE GALLERY OMOTESANDOにて開催する。開催に先駆けて、オンラインでインタビューを決行。同じ映画業界に身を置く夫のアレックス氏とともに、今回のプロジェクトについての質問に答えてもらった。

――まずは、バックグラウンドから教えてください。出身地はどちらでしょうか?

Shawn(以下S)「生まれも育ちもロサンジェルス。あちこち移動はしたけど、人生のほとんどをここで過ごしています。ここにいる主人も生まれも育ちもロサンジェルスです」

――コスチュームデザイナーが最初の仕事ですか?

S「30年、衣装デザイナーとして活動しています。私の母親が映画の衣装デザイナーで、最初は彼女のアシスタントとして働いていました。独立して自分の仕事を始めた時は、まだ本当に若かったですね」

――子供の頃からお母様の仕事を目の前で見ていたのですね。

S「そうですね。自分がやっている衣装デザインという仕事がとても大好きで、私の天職だと思っています。私も主人も映画業界の中で育っているから、実のところ私は映画のことしか知らないのです(笑)」

――ご主人は何をされているのですか?

Alex(以下A)「ディレクターや脚本家のマネージメントと映画やテレビ番組のプロデュースをしています」

――Shawnさんは、ホラー映画を含めて、様々な映画の衣装デザインをされています。映画の衣装デザインという仕事は、メインの役者さんたち以外にも全ての出演者の衣装を手がけるものなのですか?

S「全ての出演者の衣装に関わります。映画の内容や予算によって変わるのですが、多くの場合は予算がないので既成の服を購入してアレンジします。「ザ・グラッジ 呪怨」という日本で撮影したホラー映画の衣装デザインを担当した時は、私は撮影現場に行かなかったので、日本人のキャストの衣装はてがけませんでした。その映画だけですね。全員の衣装を担当しなかったのは。その他は全ての出演者の衣装をてがけます」

――想像以上に大変そうな仕事ですね。

S「そうですね。でも、本当にこの仕事が好きなんです。この仕事で一番好きなのは、登場人物の作り込み、ストーリーを作るところ。全ての登場人物にはストーリーがあって、どんな服装がいいかとかアイディアを出すのも好き。台本にはどんな服を着ているか書かれていないから。だから、登場人物に対する自分独自のヴィジョンを持たないといけないのです。それをディレクターに伝えて、一緒に作り上げたり、時には私に全て任せてもらったり。衣装はただのイメージではなく、ストーリーなのです」

――服は着ている人のいろんな側面を表していますよね。

S「そうなのです。だからとても大事なのです。服装はその場人物のことを最初に表すもの

だと思いますし。ヘアスタイルもそうですが、服装を見たら、どんな人かわかりますよね」

A「ある人は言葉でストーリーを語るし、ある人は音楽でストーリーを語る。衣装は視覚のストーリーを語っているのです」

S「映画を見ていて、登場人物と服装がマッチしてないと、これはちゃんとストーリーを伝えられてないわって思ってしまいます」

――今回のアートのプロジェクトはどのような経緯でスタートしたのですか?

S「私にとって特別な時期に始まりました。私たちには娘がいて、彼女がとても苦しい体験をしている時で、家族にとってもとても苦しい時でした。それで、私は自分のスタジオにこもって、自分の中の痛みの矛先をアートに向けることにしたのです。作品自体はハッピーに見えるかもしれないですが、ハッピーな心境から作り出されたものではありません。作品は暗くはないですが、強烈な暗さの中で生み出されました。けれども、このおかげで私の精神は生き続けることができたのです」

A「苦しみが行き着くところまで行くと、宇宙のクリアでピュアなチャンネルになるのです。作品も自分を通して降りてくるのです」

S「作品のイメージがとてもパワフルに降りてきて、追いつかないくらいでした。タイトルもとてもクリアに頭の中に浮かんできて、ものすごいエネルギーが降りてきて、作品もいいものができました。とてもパワフルで不思議な体験でしたね。私のハートと魂を救ってくれましたね。私はこれが必要だったのです」

――手が自動に動いた感覚ですか?

S「そういう時もありました、呼ばれる感じでスタジオに入って、2、3作品作っていました」

A「1時間の時もあれば、一晩中制作していたときもありましたね」

――トータルでどのくらいの数の作品を制作したのですか?

S「60作品くらいです。自分の心と魂のために創っていたのですが、次から次へと作品ができたので、近い人たちに見せていたのです。そうしたら、買いたいという人がたくさん現れて。でも、自分にとって特別なものなので手放したくはなく、どうしたら、他の人たちにシェアできるか考えました。オリジナルは小さくて、12×16インチ(約30×40cm)です。それで、スキャンして大きなプリントを作ることにしました。大きくしたら素晴らしくて、びっくりしました。まるでポータル(異世界への入口)みたいな感じで、違う世界を覗いているような感じです」

A「作品を飾るとその部屋のエネルギーが変わるのです。個展では10作品展示します。プリントは、6×4フィート(約1.8×1.4m)という大きなサイズで、その部屋のエネルギーや景色を一瞬にして変えてしまうのです」

S「見た人からは、ただ、ずっと見ていたいって言われました」

――観るものを異次元に連れて行ってくれる感じですね。

A「その通り!」

――作品制作のプロセスで、Shawnさんの魂はどのように変容しましたか?

S「とてもいい質問ですね。作品を制作したことでとても助かりました。本当に闇のような時間だったので、(作品制作をしていなかったら)鬱になっていたかもしれません。でも、作品を作ることが喜びにつながり、たくさんのインスピレーションをもらいました。作品ができるたびに親しい友人に見せて、彼らの反応を聞いてまたやる気になりました。他の人にも喜びを与えることができて、私自身も変わることできました」

A「この作品を作ることに結びついた人生における困難がなんであれ、宇宙の純粋なチャンネルを自分が見つけ出した時に、作品が生み出される道が自然と開かれるのです。そして、自分は今正しい場所にいるのか? 自分は今正しいことをしているのか? という誰もが人生で持ちうる疑問に対する答えをすぐに見つけ出すことができるようになるのです」

――観ている人の変容のきっかけにもなりそうですね。

S「そうなのです。なので、今回の個展のみなさんの反応をとても楽しみにしています。私自身もまだ、10作品を一同に介して観たことがないので」

――アートについて少しうかがいたいのですが、好きなアーティストはいますか?

S「若い時はアンディー・ウォーホールにとても影響を受けました。ロンドンにいた時に彼からサイン入りの本をもらって、大変興奮しました。マックス・エルンストやサルバドール・ダリの時代に、影響力が強いのだけどあまり知られてない女性のアーティストたちがいて、そのうちの2人、ドロテア・タンニング、レオノール・フィニが好きです。あとは、60年代、70年代に活躍したペニー・スリンガーのコラージュ作品も素晴らしいです。ペニーはコスチュームも手がけていました」

――今回、tHE GALLERY OMOTESANDOで個展を開催することになった経緯を教えてください。

A 「作品ができあがって、どこかで展示すればいいのか考えていたんです。ロサンジェルスで個展をやるのは気が乗らなくて、どこで展示をしたらいいかと宇宙に質問を投げかけたら、「東京」って答えが返ってきたのです。それで、ジェフ・ミヤハラという知り合いに相談してみたら、作品をすごく気に入ってくれて、シャドーギャラリーのアレックスを紹介してくれて、パートナーになってくれました。そのアレックスが、tHE GALLERY OMOTESANDOのYONEとYOKOを紹介してくれたのです。宇宙を信頼して委ねるトレーニングにもなりましたね」

S「私と主人は正しいと感じるか、直感を大切にしています」

A「作品ができた経緯、出会った人たち… etc., 今回の全てのプロセスがマジックともいえますね。宇宙に任せるよと委ねたら、素晴らしい人たちと出会えて、プロジェクトがまとまったのです。とてもスペシャルなものになるかと思います」

S「ギャラリーに併設しているレストランでは、私の作品を料理に落とし込んだメニューを作ってくれるとのことで、そんなの聞いたこともないし、そんなことしてもらえるなんて思ってもみませんでした。自分の作品にインスパイアされた食べ物を作ってもらえるなんて、信じられないです」

A「全ての作品にタイトルがあって、作品の観かたもそれぞれの人が違っていて、観た人たちがタイトルについて考えてみる。この行為自体もアートになると思っています」

S「作品を観てみなさんがどう思うのか聞くのをとても楽しみにしています。それぞれの人が違う感想を持つと思います」

A「大事なのは、作品を観る人の体験です。私たちについての情報がもしかすると作品を観る人に何らかの影響を与えてしまうかもしれないですが、作品を純粋に体験してもらえばと思います」

――日本に滞在している間にやりたいこと、訪れたい場所はありますか?

S「ただ道を歩くだけでも満足かもしれないです。着いたらすぐに個展の準備で忙しいけれども、ロカビリーの人たちのダンスを見に来たいですね! あとは、日本の伝統的な舞踏も観たいです。それ以外は、来るもの拒まずで」

A「京都に日帰りで行けたらなと思ってます」

【プロフィール】

ショーン・ホリーは、ハリウッドを代表する数々の映画を手がけた熟練のコスチュームデザイナーである。彼女の作品は映画界に多大な影響を与え、西洋文化に永続的な影響を残している。また、批評家から絶賛され、数々の賞にノミネートされ、先見の明と創造力の先駆者としての彼女の名声を確固たるものにしている。2024年、ショーン・ホリーはコスチュームデザインからビジュアルアートへと活動の場を移し、新たな章を開こうとしている。しばらくの間、ファインアートに才能を注いできた彼女は、2024年10月に東京で開催される『Share the Wealth / 共有』と題した展覧会で、その成果を披露する準備が整っている。10点の大型キャンバス作品からなるこのコレクションは、彼女の一目で視覚を奪うコラージュ作品を紹介している。どの作品も魅惑的なイメージと示唆に富む図像を融合させ、富の精神的・物質的側面に関する現代的な解説を提供している。作品は刺激的かつ挑発的で、見る者を超現実的で重層的な物語へと引き込み、彼女の独特な芸術的ビジョンと創造的表現の進化を垣間見ることができる。生き生きとした魅力的なイメージと重層的な図像を通して、精神的な豊かさ、女性的なエネルギー、目に見えない力の交流といったテーマを探求している。

【開催概要】

タイトル:SHAWN-HOLLY 「SHARE THE WEALTH / 共有」
会場:tHE GALLERY OMOTESANDO
会期:東京都渋谷区神宮前 5-16-13 SIX HARAJUKU TERRACE S 棟 2F
日程:2024年10月5日(土)〜 10月24日
休廊日:10 月 7・8・15・16・21・22 日
時間:12:00 PM – 7:00 PM
HP:https://thegallery-harajuku.com/
Instagram:@the_gallery_omotesando

writer: Atsuko Matsuda