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Stereo Tennisインタビュー:80’sポップを独自の解釈でデザインに落とし込むグラフィックデザイナー

2019.04.05

80’sポップにインスパイアされたグラフィックで知られるStereo Tennis(ステレオ・テニス)。昨年は東京ガールズコレクションのメインビジュアルや東京ディズニーリゾート施設「イクスピアリ」内にオープンしたプリクラスタジオ、Moeru Mignon Maihama IKSPIARIの内装デザインを手がける等、その活動の幅がますます広がっている。現在は東京と鹿児島を行ったりきたりする日々を送っているという彼女に、これまでのキャリア、作品のインスピレーションのもと、今後の活動について話しを聞いた。

————まずはバックグラウンドを教えてください。

「京都の美大に行ってて、学生の頃にVJをやり始めたんです。その延長でチームを作ったりして。あとはレコード屋さんでバイトしたり。デザインのアルバイトをしてみたり。卒業してデザイン会社に入ってからも、フリーでできるものを平行してやっていたら、個人の仕事の方が増えて来て、そちらの割合が多くなってきたので、会社をやめて東京に拠点を移しました。大学出て代理店に入ってという感じじゃなかったので、自分では叩き上げって思ってます!」

————なぜ東京に拠点を移そうって思ったのでしょうか?

「その時に働いてた会社の友達の先輩に東京行くけど行く?って誘われて。ちょうど京都のカルチャーも衰退してきてて」

————VJをしていたのはWORLD(京都のクラブ)とか?

「そうですね。あとはMETROとか」

Moeru Mignon Maihama IKSPIARI

————デザイン的に影響を受けたグラフィックデザイナーやアーティストはいますか?

「若かったから、まんべんなくいろいろ好きでした。80年代のレコードのジャケットとか雑誌の中の広告とか。どのデザイナーという感じではなくて、あのムードとか盛り上がりに惹かれていました」

————80年代は小学生ですよね?だとしたら、当時はこのデザインはいいな〜みたいな目では見てないですよね?

「そうなんです。でも、テレビの雰囲気は覚えてますね」

————大人になってから80年代に惹かれるようになったのはどうしてでしょう?

「親戚のお姉ちゃんが見ているものが憧れの対象だったんです」

————なるほど。身近な年上の影響って大きいですよね。話は変わりますが、普段はクライアントさんからのリクエストありきで作品を作ることが多いですか?

「はい、ほとんどそうです。アーティストみたいに自主的に作る機会はあまり多くないですね」

Moeru Mignon Maihama IKSPIARI

————なかなか80’sと結びつかないような商品を80’sっぽくすることもあるかもしれませんが、そういった頭の中でのイメージの転換の作業は大変ですか?

「そのフィルターを通して見ているので、何を与えられてもそうなりますね。感覚のストックが多いので、何を見てもそうなります(笑)」

————サイトを拝見しましたが、グッズの数も凄いですね!

「テキスタイルから作って、自分で製品化しているんです。巾着だったりポーチだったり、製品自体のデザインもします。縫製は友達に頼んでいます」

————電気グルーヴさんのグッズも手がけていますよね? どんなきっかけでやることになったのですか?

「ケラさん(ケラリーノ・サンドロヴィッチ)が脚本を手がけたテレビ東京の『怪奇恋愛作戦』(2015年)というドラマがあって、プロデューサーの意向が番組全体を80年代のムードにしたいということだったんです。それで、直接連絡が来たんです。その時のエンディングテーマが電気グルーヴの楽曲で、私がエンディングのアニメーション用のイラストをやることになったんです。その時は実際には会ってないんですけどね」

————しばらくして本人に会ったと?

「1年後くらいに今度は電気グルーヴのツアー・グッズを作って欲しいというオファーが来て。石野さんは相手のクリエイティブに真摯に向き合われていて、すべて任せてくれるんですよ。だから、変な物は出せないっていうプレッシャーもありましたね。さぐりさぐり作るのではなく、全力で向かっていなかいといけないんです。だから、凄く鍛えられましたね」

photo : 鈴木心

————そういえば、昨年、地元の都城で地元の都城の図書館で「ステレオテニスの仕事展」というエキシビションをやってましたよね。

「そうなんです! 実は最近、東京と九州の2拠点で生活しているんですよ。東京と鹿児島と宮崎。もともとは宮崎の出身で、鹿児島も近いので。今、そっちでいろいろやるのも楽しくて。あちらの飲食店の人とか、東京から九州に戻ってきた人とか移住した人とかと一緒にお仕事するのが楽しいです。東京でできないことが向こうでできたり」

————何がきっかけだったんですか?

「施設としてのグッドデザイン賞を受賞した、文化の発信拠点のような大きな図書館(都城市立図書館)が地元にできて、それがとても興味深く、一昨年の半ばくらいから月イチで帰るようになって、向こうが楽しくなっちゃったんですよね。仲良くなった人もいたりして。最近2拠点で活動している人も増えているし、航空券はLCC(ローコストキャリア)も飛んでいるのでコストもかからないんです。向こうだと企画が通りやすいっていうのもいいです。東京だと似たようなことやってる人がいっぱいいて、どう差別化するかってことに頭を使わなければいけないんですよね。なので、企画が通ったりするのも楽しいし、その企画を逆に東京に持ってきたりもできるので。今は自分が楽しいと思うことを大事にして動いてます。もちろん、東京も大好きですけど、離れるとより東京の良さも分かるんです」

————ところで、ずっと気になってたのですが、ステレオテニスって名前はどこから来たんですか?

「京都にいる時に、友達と80年代テイストのチームを作ることになって、意味がそんなになくて、単語で80年代を連想できる単語を2つ繋げてみたんです。深い意味は何もないんです。ステレオとテニスって80年代っぽいじゃないですか」

————分かります。すごく80年代です(笑)。では、ジャンルを問わず一緒に仕事をしたい人はいますか?

「います、います! ずっとTwitterに書いてたんですけど、「クィア・アイ」(*)の出演者たちが先日、日本に撮影に来ていたんですよ。日本でのシーズンを放送するみたいで。彼らのことが好きで。80年代とは関係ないけど、グッズ作ったり仕事したいです。いろんな所に出没してたみたいで、会いたかったです」

ーーーー最後に何かニュースがあれば教えて下さい!

「メガネ好きが高じて「都城中めがね店」と共同運営で、ビンテージ眼鏡屋さん(ネットストア)をはじめました。名前は古き良き眼鏡屋 という意味のGood Old OPTICIAN’Sです」

*クィアーアイ: ネットフリックスのリアリティ番組。

【Information of STEREO TENNIS】

WEBSITE: http://www.stereo-tennis.net/

Instagram: @stereo.tennis

Twittter: @microhitomi

writer: Atsuko Matsuda