TOT GIOVANNY SANCHEZ インタビュー:コロンビアのストリートアートシーンを牽引するアーティスト
2018.06.11
ここ数年、ストリートアートの勢いが増しているラテンアメリカ。50年以上続いた内戦に終止符が打たれたコロンビアのボゴタも例外ではなく、中でも屈指のアーティストとして知られているのが、GIOVANNY SANCHEZ(通称、TOT)だ。ナイキやサムソンなどグローバルブランドともコラボレーションをしているTOTが、日本で初の個展をGALLERY 21にて開催(個展はすでに終了)。日本から直線距離にして15,000キロ弱。コロンビアの知られざるストリートアートシーンに迫った。
————コロンビアのボゴタ出身だそうですが、どんな子供時代を過ごしたのでしょうか?
TOT「子供の頃から絵を描いていたよ。何才くらいからかも覚えてないなぁ。3才とか4才かな。幼稚園くらいの頃から、両親もサポートしてくれた。家では壁に紙を貼ってそこに絵を描いていたよ。13才くらいになるとストリートでも描くようになった」
————子供の頃からグラフィティライターだったんですね! 画材は何を使っていたのですか?
TOT「小さい時はクレヨン。今はスプレー缶だよ」
————美術系の学校には行かれたんですか?
TOT「子供の頃からコンテストには参加していたよ。高校生の頃には絵を描いて行きたいって心に決めて、卒業して後はアートスクールに通ってグラフィックデザインを学んだ」
————スプレー缶で描くようになった頃は、ボゴタにはグラフィティシーンはあったのですか?
TOT「その頃はまだなかったよ。海外のカルチャーって感じだった。グラフィティは、自分にとっては自由を表現して、人々に美しいものを見てもらう手段だったんだ。猫のモチーフのグラフィティを通して、愛のメッセージを届けたかったのさ」
————それはいつ頃ですか?
TOT「92年か、93年くらいかな。まだ高校生で、さっきも言ったように猫のモチーフのグラフィティを描いていて、みんなに知られていたよ」
————スプレー缶はどこで購入していたのですか?
TOT「バルセロナからモンタナの缶を持って来てたよ。モンタナは匂いも悪くないしね」
————ポスカなどは使ってましたか?
「ポスカやクレタケを使っていたよ。なぜかしらないけど、昔は日本の製品が手に入りやすかったんだ。アニメも流行ってたし。昨日、東急ハンズに行ってポスカをたくさん買ったよ!」
————日本のアニメは何を見てましたか?
「ミツバチハッチ、鉄腕アトム、マジンガーZ、キャプテン翼…」
————どんなアーティストの影響されましたか?
「バスキアは僕のアイドルだよ。テクニックからフィーリングをどうやってキャンバスに落としこむのか何からすべて素晴らしいね。そして、グラフィティをギャラリーに持って行ったこともね。とても影響を受けたよ」
————今もボゴタ市内の壁にスプレー缶で描いていますか?
「壁にスプレーで描くのは、自分にとって平和への叫びなんだ。そして、街へのプレゼントでもあるよ。美術学校で勉強もしてるから、スタジオでキャンバスに描くのも楽しんでいるよ」
————VICEマガジンの動画でコロンビアの女性グラフィティライターについて記事を読みました。女性のライターはたくさんいるのですか?
「最近はバルセロナに住んでるMiss Vanとは最近会って一緒に描いたよ。コロンビアのライターのLa Jaxxとは、AIR MAX DAYのプロジェクトで一緒に仕事をした。僕とラジャックスで街中をペイントしたよ。彼女は女性のパワーにフォーカスしてるんだ」
■TOTの「AIR MAX DAY」プロジェクトの壁の制作風景
■La Jaxxの「AIR MAX DAY」プロジェクトの壁の制作風景
————コロンビアのグラフィティシーンはどんな感じですか?
「凄く大きくなってきているよ。僕の作品に影響を受けた若いライターたちが育ってきている。マイアミのアートバーゼルにもたくさんのコロンビアのアーティストが招かれている。この間はマイアミのウィンウッドにも描きに行った。ウィンウッドはかつては何もないエリアだったんだけど、今はレストランとかカフェとかギャラリーがたくさんあるんだ。で、毎週土曜日にギャラリーを開放するイベントをやっているんだ。あと、とても大きな壁がいくつもあって、そこにアーティストがペイントしているんだ」
————さきほど、NIKEと仕事をしたと言ってましたが、他に企業の仕事などはしていますか?
「サムスンとは何回か大きなキャンペーンをやっているよ。あとは、ノキアとかポルシェとか。スペインのアパレルともやったな」
————最近はファッションブランドだけでなく、普通の大企業もグラフィティアーティストと仕事をしたがっていますよね?
「コロンビアでも大きなグローバルブランドがコロンビアのアーティストとプロジェクトをしたがっているよ」
————今回、日本に来た目的はエキシビションですか?
「日本には去年初めて来たんだ。コロンビアのエクスポでね。今回はエキシビションだけのために来た。前回来た時に、GALLERY 21でOBEY GIANTの作品の展示を見て、ぜひここでエキシビションをやりたいって思ったんだ。シェパードフェアリーは僕のアイドルだからね。前回はコロンビア大使館に呼ばれて東京モード学園でスピーチもしたよ。スプレーペイントを通して心を開くっていうコンセプトでね」
————これからの予定は?
「TOTキャット(TOTが描く猫のモチーフ)をアニメにしたい。ぜひ、日本のアニメーターと一緒にやりたいね。日本はアニメのメッカだから。もうひとつは、TOTキャットのスカルプチャーを作り続けたい。あとは、スニーカーを作りたいんだ。ファッションデザイナーとグラフィティライターとコラボレーションをさせてね。AIR FORCE ONEのようなアイコンのスニーカーにペイントをすることから初めて、スニーカー自体もオリジナルで作りたい」
writer: Atsuko Matsuda