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THA インタビュー:imaone, SUIKO, TENGAoneから成るミューラルプロジェクト

2018.03.14

グラフィティライターとしてワールドワイドに活躍する3人のアーティスト、imaone、SUIKO、TENGAoneが、ミューラル(=壁画)に特化したプロジェクトチームとして発足した「THA」(ザ)。ミューラルという表現方法によって、商業ビルやホテル、様々な公共施設、あるいはギャラリーから広告まで、これまで様々なプロジェクトを手がけてきた彼らが、昨年9月末、東京・虎ノ門に「THA 新虎スタジオ」をオープンした。この新たな拠点にて、imaoneとTENGAoneの二人(広島を拠点としているSUIKOは欠席)に、THA結成の話から、今の日本のミューラル事情まで話を聞いてみた。

Henna Hotel by SUIKO / 2017

ーーーーまず、3人の出会いから教えてください。

TENGAone「もともと、18とか19歳くらいの時から、お互いにちょっとだけ知ってて」

imaone「お互い、街に描いている(グラフィティの)ピースとかボムを知ってた感じですかね」

TENGAone「それで、街で遊んでいる時に、会う機会があって。そこにイマ君(imaone)がいて。それから、5年くらい間があいて。そこでピースのスポットみたいなところで、たまたまバッタリ会って」

imaone「ニヤニヤしちゃいましたね(笑)」

TENGAone「一緒に何か出来そうだねっていう話をすぐにして。SUIKOもすでにイマ君と出会っていて。SUIKOのことも気になっていたから、それから3人でどっか一緒に行って、描いたりっていうのが始まりだよね。それが2000年くらいかな?」

imaone「3人で、すごい勢いで壁を描いたり。あとはイギリスのツアー。あれも楽しかったですね」

ーーーーそれは何年くらいのことですか?

TENGAone「2005、6年かな?」

imaone「『Sleeping Giants Graffiti Jam』っていうイギリスのブライトンでやった、世界中からライターが集まる大きなグラフィティイベントがあって。SUIKOは前乗りして、僕とテンさんが後から現地で合流して、一緒にピース描いて。そのあとはイギリスの各都市で、現地のやつとかと一緒に描いたりして」

TENGAone「その頃は、個々にもやっていたけども、ほぼ3人でやるのがメインになってましたね」

ーーーーそこから、THAというプロジェクトチームとしてやるようになっていく経緯は?

TENGAone「THAの前にNANASHIっていう、3人でのミューラルのチームを作っていて。その時は、あまり金儲けっていうのは考えてなかったけども、ゆくゆくはこれを仕事にしていければなっていう、おぼろげなプランはあって。けど、そこから個々の動きが多くなってきて。今から3、4年前くらいに、再結成じゃないけど、もう一回やってみようって。それで、大阪のRITZ inc.っていうデザイン会社が母体になって、THAがスタートしました」

imaone「もともと、僕がそこ(RITZ inc.)で外注のグラフィックデザイナーとしてやってて。そこの社長から『何か出来ないか?』っていう話があって、ちょうどテンさんとかとも『何かやりたいよね』っていう話をしてたので、じゃあ、会社っぽく、プロジェクトチームとして動きましょうって」

ーーーー結成した時に、THAとしてどうしていきたいっていうのは、話したりはしましたか?

imaone「全然無いですね。けど、まずは仕事としてやるには、社会的にわかりやすくっていうことで、THAっていう形にしたことで、それで一個クリアで。あと、ここ数年で見えてきたんですけど、会社として、THAで受けた時に何が出来るかっていうと、徹底的に一人のアーティストをバックアップ出来る。例えば、白浜フローラルホールっていうところでやったミューラルがあるんですけど、それはテンさん指名で。メンドくさいことは全部こっちでやって、テンさんにはとことん描いてもらうっていう形でやって」

ーーーーTHAとして、今まで手がけてきたプロジェクトはいくつくらいですか?

imaone「一応、全部、ナンバーを振っていて。SUIKOが今年やった銀座のホテルが最新で、それが15個目ですね」

HEARTHSTONE by imaone & TENGAone / 2016

ーーーー今までの15個のプロジェクトで印象に残っているのは?

imaone「さっき話の出た、テンさんとの白浜のは面白かったですね」

TENGAone「うん、あれは良かったね」

imaone「あと、新宿のゲームの広告のも面白かった」

TENGAone「あれは結構、ツラかった思い出が、、、。真冬だから寒かったし。2日間のはずが、雨が降って1日になっちゃったり」

imaone「ああいうのは、数年前だったら絶対に引き受けてない仕事だと思うんですけど。すでに描くものも決まっていて、これを描いてくれって。けど、広告仕事なんで、予算もちゃんとしているし。あと、描いている後ろで、ゲームに付随した番組とか始まって、アイドルがMCをしたり、声優さんとかが来てなんかやっていたり」

TENGAone「後ろで絵を描いてるのに、全く興味が全くないお客さんたちがたくさんいて、アイドルの名前を叫びながらとか(笑)。そういう中で描いたんですよね」

imaone「もともとはプロデューサーが僕の学校の頃からの友達だったので、来た話なんですけど。そういうのもなんか、経験としては良いかなって。あと、大阪のCasoっていうギャラリーでやったのも面白かったですね。下描きもほぼせずに、『じゃあやろうか?!』っていう感じでやって。これはまずSUIKOに話がきて。SUIKOが『3人でやろうよ』って言ってくれて、実現したんですよね」

imaone「僕は吉祥寺のメイズ・ワン・ビルっていう商業ビルでやったのが、やっぱり思い出深いですかね。これは2007年なんで、THAの前の作品ですけど、テンさんとSUIKOと僕と、あとは神奈川を代表するSCAっていうクルーがあるんですけど、そこからKRESSさんとか、PHIL、FATE。その6人でやってみたんですよ。これがみんなでやった中で一番デカいもので。多分、2週間もかかってない」

Mays One Bldg by imaone, SUIKO, TENGAone, FATE, KRESS & PHIL  / 2007

ーーーーこれを普通の商業ビルでやるっていうのが凄いですね。しかも今から10年前に。

imaone「そこのオーナーが本当にヤバいですよ(笑)」

TENGAone「多分、これが今まで一番自由だったような気がする。しかもお金もちゃんと出てて」

ーーーーTHAとして、これから手がけるプロジェクトはどういうのがありますか?

imaone「ちょうど来週から岡山にある天文博物館で描くことになってます。それはSUIKOがメインで、僕が段取りとサポートを。その後は、THAとは別に個々のプロジェクトが続いていて、テンさんは展示のオンパレードで、僕も壁の仕事がいくつか入ってますね」

ーーーーTHAとしてミューラルを仕事として受けるようになってきて、世間からのグラフィティやミューラルに対する見方の変化っていうのは感じますか?

imaone「あんまり感じないかな~、、、?」

TENGAone「すごい変わったっていう印象はないですね。多少は変わってるんだろうけど、変化があまりにも微妙すぎて。けど、徐々には変わってきているんじゃないかな?」

German Embassy by imaone / 2018

ーーーー例えば、もし10年前にTHAとして始めてたとしても、仕事の話がくることすらなかなか難しいかったのではないでしょうか?

imaone「確かにそうかもしれませんね」

TENGAone「昔よりは、ストリートアートとかグラフィティが本当にアートとして認識され始めてきたから、僕たちみたいなアーティストを使って何かをしたいっていう企業とかも、めちゃめちゃ増えてきているけど、それでグラフィティに対する認識のされ方が良くなっているかっていうと、それは全く別で。まだ、感覚的な部分だけしかなくて。使っていただける人たちもまだ理解出来ていない部分や、僕たちからも伝えきれていないところもあって」

imaone「それは向こうだけの問題じゃなくて、お互い様なんですけどね」

ーーーー仕事をしていて、具体的にどの辺りがそう感じるところですか?

imaone「クライアントが求めている最終的なものと、僕らが求めている最終的なものの、クオリティだったり、匂いだったりとか、その差があまりにも激しい。お互い目指している着地点が、壁画っていう意味では一緒なんだけども、モノとしてのあり方っていうのが、全然違っちゃっているから。そこの穴埋めだったり、バランス取るのが大変で」

TENGAone「僕はこれはアートだと思ってやってるんで。もちろん仕事ではあるんだけども、看板屋じゃないっていう気持ちなんですよね。だから、ちゃんとコンセプトを考えて、そこの場の意味だったり、自分の描くものっていうのはリンクしているし、そこがすごく重要で。でも、クライアントはお金を出すわけだから、口も出すし、要望されるものがどんどん大きくなっていったりして、最終的に方向性が変わっていくっていうのはよくあることで。まあ、クライアントありきの話だから、しかたないんですけどね。けど、難しいんですよね。アートになり得ないっていうか」

imaone「けど、ここ近年は僕らにとっては状況が良くなってきていて。直接(アーティスト名で)指名してきてくれるんで。だから、わりとやりたいことは出来ているのかなって」

ーーーーちなみにクライアントから直接の指名の場合は、どういう感じで話がくるんですか?

imaone「インターネット上で見たとか。あとは信頼出来る人からの紹介とか。そういうのが多いんじゃないですかね? 東京のインターナショナルスクールで描いた時は、すごく面白くて。その学校の先生が、『誰か学校に壁画を描いてくれるローカルのアーティストいないか?』みたいのをツイートしたら、ロンドンの僕の友達がそれを見て、『imaoneっていう東京のやつがいるから、コンタクト取ってみて』って言ってくれて。そしたらこっちに連絡がきて。そういうのって嬉しいんですよね。縁っていうのを感じるし、条件はどうであれ、やりますって」

Mural in Nepal by SUIKO / 2016

ーーーー海外での仕事もいくつか手がけていますが、海外と比べて、日本のミューラル事情はいかがですか?

TENGAone「日本のミューラル事情は、まだ全然満足はいっていないですね。さっきも言ったように、ストリートアートを使って、世の中に発信していきたいっていう会社は、昔よりは増えていて。けど、僕たちみたいな、もともとグラフィティやっていたアーティストっていうのは、あんまりそういうところに繋がりにくいっていうか。僕たちとは違う、もっとそういうものに寄っていったアーティストのほうが、グラフィティに似たアートとして、世の中に紹介されている」

imaone「そして、仕上がりがクソださいっていう(笑)」

TENGAone「まあ、ダサい、ダサくないかっていうのは別に置いておいて(苦笑)。自分たちも、どう向こう側に寄っていくかっていうのを、考えないといけないなっていうのは思ってます。THAとしての活動っていうのも、対個人としてやっているより、もっとやりやすくするためのものでもあるし」

ーーーーTHAとして将来的にこういう仕事をやりたいっていうのはありますか?

imaone「こんな建物に描きたいとか、こんな案件が欲しいっていうのはもちろんありますけど、そういうのはとりあえず置いておいて。それよりも徹底的に一本やり切るっていうのを、僕はやっていきたいですね。一本一本を完璧に仕上げていくっていうか。しかも、お客さんに言われるんじゃなくて、こっちが引っ張っていくというか。そういうのが大事かな。あと、もちろん壁は壁でやるんですけど、もっと個人の(ギャラリーに展示するような)作品にもフォーカスした活動をしていかないと、足元すくわれて終わるっていう匂いもプンプンしていますね」

TENGAone「僕も、イマ君が言ったみたいに、とりあえず来た仕事は着実に良いものにしていくっていうことだけですね。それを10年とかやったら、おのずと『これが良いんじゃない?』みたいなものが見えてくるのかなって。とりあえず、何がしたいっていうのから始まっているクルーじゃないから、3人でやれることはやっていくっていうのが目標ですね」

ーーーー最後に将来のクライアントに対して、THAの売りを伝えるとしたら?

imaone「徹底的にやり散らかすっていうところじゃないですかね。散らかすっていうのは汚すっていう意味じゃなくて。彼らが求めているものの上を行って、ちゃんと仕上げるっていう。そのためには、もちろんお金も必要なんで。『こうやるから、これぐらい必要なんですよ』っていうのは、遠慮なく言わせてもらいますけど。それでアーティストを守れるので。THAを立ち上げたことによって、そういうことが遠慮なく言えるようになりましたね」

TENGAone「売りは、なんだろ? すごく真面目なところじゃないですかね。あと、多分、良い意味で裏切れると思うんですよ。向こうのやりたいこととか、これは守って欲しいっていう要望を聞きながら、向こうのストライクゾーンに絶対に僕たちは入れていくんだけども、その上で予想外のものも入れていく。そういう、裏切れるっていうのが、THAの売りじゃないかな」

imaone on Tokyo International School, Tokyo from THA on Vimeo.

TENGAone on Shirahama Floral Hall, Chiba from THA on Vimeo.

imaone & Zed1 on Kawada Bldg. Tokyo from THA on Vimeo.

 

THA(ザ)

日本を代表するアーティスト、Imaone(イマワン)、SUIKO(スイコ)、TENGAone(テンガ・ワン)が所属するミューラル(壁画)に特化したプロジェクト・チーム supported by RITZ inc.

http://www.ritzcorporation.jp/tha/

writer: Kiwamu Omae