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Ken Miller インタビュー:TOKIONの編集長をはじめ、様々なバックグラウンドを持つキュレーター

2017.12.19

国内外の現代美術作家やストリートアートのアーティストの作品を展示、販売する原宿のギャラリー、GALLERY TARGETが10周年を迎えた。周年を記念して行われた特別企画展のキュレーションをつとめたのは、オープン直後から何度かプロジェクトを一緒に行っているNY在住のキュレーターのKEN MILLER氏だ。元TOKIONの編集長という経歴を持つKEN氏に、10年間のアートシーンを振り返ってもらうとともに、今後の展望についても語ってもらった。

————GALLERY TARGETが10周年を迎えたとのことで、おめでとうございます。彼らとはオープンからずっと仕事をされているんですか?

「オープンしてすぐ仕事をするようになったから、9年くらいかな。一番最初は東京のPARCOのギャラリーで開催した写真展だったんだ。僕がキュレーターとして参加して、彼らがコーディネートしてくれた。いつもサポートしてくれるし、一緒にエキシビションを開催したり。今までに4回くらい一緒にやったかな」

————東京のサブカルチャーを扱った雑誌、TOKIONの編集長を2002年から2007年までされていましたが、その前のキャリアについて教えてください。

「生まれも育ちもNYのブルックリンだよ。カレッジを卒業した後はいろんな仕事をしたよ。カレッジではアートを勉強していて、在学中にエキシビションもやったことがあるよ。友達のサイトに映画のレビューを頼まれたりしているうちに、最終的には編集の仕事に落ち着いたんだ。TOKIONで働き始めた時は、まだ新しくて小さい編集部だったから、いろんな経験をさせてもらったよ。インタビューして、原稿を書いて、写真の加工などもした。そこで、アーティストやカメラマンたちと関係ができたんだ。その流れで、写真展をすることになったんだよ」

————GALLERY TARGETと仕事をするようになって9年とのことですが、日本のアートシーンを見ていて変わったことはありますか?

「その頃の日本のシーンは盛り上がっていたと思う。今はちょっと落ち着いたかな」

————なるほど、その代わりに香港や上海などが盛り上がっているように見えますか。

「でも、中国はまたちょっと違う盛り上がり方なんだよね。アートブームは常に世界のどこかで起きているんだ。ギャラリーのビジネスをしている人は常にどこでブームになっているか把握していなきゃいけない。次はロシア、次は中国だ、みたいにね。日本のアートは10年前にアメリカで大きなブームを迎えた。村上隆や2回目の草間弥生ブームとか、森万里子とかね。その頃に比べると、今はアメリカでは日本のアーティストの存在感はあまりないね。ちょっと世界と切り離されてる感じがするんだ。だから、なるべく日本と行ったり来たりするようにしているんだ」

————今はNYでキュレーターとして活動しているのですよね?

「そうだね。今は主にクライアントのためにエキシビションをしているんだ。GALLERY TARGETとはユニクロのエキシビションをやったこともあるよ。去年は全米でsportifyのために大きなエキシビションをやった。10都市のツアーで、その都市ごとに違うテーマで違うアーティストの展示をした。それぞれ1週間のエキシビションで、10週間続けたんだ」

————Spotifyは音楽配信の会社ですが、どのようなエキシビションだったのでしょうか?

「多くのアーティストが音楽とクロスオーバーしているからね。例えば、ヒシャーム・バルーチャはアートも音楽もやっている。みんながハングアウトできるアートと音楽がある場所を提供できればいいなって思ったんだ」

————この10年の間の最も大きな変化はSNSの台頭かと思いますが、アートシーンに与えた影響についてはどう思いますか?

「とてつもない影響を与えたと思うよ。ディープなトピックだね(笑)」

————ちゃんと作品を見ることもなく、SNSにアップする写真を撮るためだけにギャラリーに来ている人たちも多いようですが。

「ギャラリーや美術館は展示するすべての作品をサイトに載せて、展示している場では写真を禁止するべきなんじゃないかな。そしたら、展示の邪魔にならないし。NYの多くのギャラリーはサイトに作品を載せないんだ。だから、みんなギャラリーに行って写真を撮りたがるんだよね。まあ、僕もやるんだけどね。メモの代わりに。僕が思うに、みんな自分のアイデンティティを作り上げて、SNSでパフォーマンスしているという点で、アーティストの感覚と似ているんじゃないかな。SNS上の自分はリアルな自分とは違うと思うんだ。いや、絶対違うよね。みんなSNS上の自分を作りあげているんだ。つまらなそうにしているところなんてSNSにはアップしないだろう。10年前は写真の善し悪しも分からない人が多かったけども、今はたくさんの人がグラフィックデザインや写真のクラスを受けていたりする。携帯でアングルやフレームのことをあれこれ考えながら写真を撮っているだろう。でも、みんなが同じような写真をお手本にしているから、個性がなくてつまらないよね」

————料理の写真などを見てると、みんな同じような感じですよね。

「景色の写真も、他の人が撮ったのと同じように撮ったりしてつまらないよね。まるで正しい撮り方みたいのがあるみたいな」

————話しを特別企画展に戻しますが、展示するアーティストを選んだ基準は?

「ケイイチ(ギャラリー代表)とトモコ(ギャラリーディレクター)と一緒にたくさん話して決めたよ。この特別展はギャラリーの10周年を記念したものだけど、もし、自分のためにやるエキシビションだったら誰の作品にするか考えてみたりね。ケイイチがバリー・マッギーを好きなのを知っていたから、バリーは絶対入れたいね、みたいに決めていったよ」

————何か全体を通したコンセプトなどありますか?

「すべてのアーティストが何かしらの形で繋がっている。実際、アーティスト同士も知り合いなんだけどね。あと、彼らの多くが手作業だし、オールドファッションなんだ」

————ところで、GALLERY TARGETさんも参加していたと思いますが、今年のTOKYO ART BOOK FESTIVALは昨年にも増して多くの人が来場していました。このような状況をどのように捉えますか?

「これまで、アートは音楽とかファッションとか映画とかの他のカルチャーと違って、どこか遠いところにあるような感じだったと思うんだ。それにはいくつか理由があると思うんだ。例えば、ギャラリーや美術館に行って作品の説明を見ると難しくて何が書かれているか分からないことが多いよね。それで、みんなアートは難しいものだって思っちゃうんだ。アートの歴史はとても古いんだ。視覚表現は貨幣の歴史よりも長いんだよ。だから、アートが身近じゃないっておかしいと思うんだよね。音楽みたいに、もっと多くの人が親しんでくれたら、アートももっと違うレベルに行けると思う。もちろん音楽も難しいものもあれば、ポップなものもあるわけだし、アートもいろんなものがあるっていうのを、TOKYO ART BOOK FESTIVALのような場所にたくさんの人が来て知ってもらえるのはとてもよいことだと思う。とにかく、いろんなものを見て触れて欲しい」

————今後、もっと多くの人がアートに触れて、身近に感じてもらえると嬉しいですね。

「これからは日本でもより多くの人がアートと触れ合う機会があると思うよ。もっと美術館やギャラリーが増えて、アート・ブックフェアにたくさんの人が訪れるんじゃないかな。アート・ブックフェアはアートが好きだから行くだけじゃなく、楽しそうだから行くっていう人もいっぱいいるんじゃないかな。行けば友達に会えるとかね。アートに関して難しい話しをするだけなじゃくて、そんな感じに楽しむのもいいと思う」

GALLERY TARGET
住所:〒150-0001 東京都渋谷区神宮前 2-32-10 (map)
T E L: 03-3402-4575

 

Text: Atsuko “Akko” Matsuda

writer: Atsuko Matsuda