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Live Painting By Flore フローリーによるライブ・ペインティング

2017.05.19

アメリカのポップアーティスト、Christopher Florentino(クリストファ ー・フローレンティーノ 通称フローリー)氏による日本初のライブ・ペインティングが、4 月16日(日)にキース・ヘリングの作品を展示する世界で唯一の美術館「中村キース・ヘリング美術館」にて開催された。

Photographed by Nobody Photography

 

四角いコマを重ねていくペインティングのスタイルで知られるフローリーの作品は、キャンバスに止まらず、ストリート、壁画、室内、オブジェなどあらゆる空間に拡張し、新しいビジュアル・コミュニケーションに挑戦する。

“絵を描くときはいつもこのスタイル”と言ってヘッドホンで音楽を聞きながら描き始めようとしたフローリー。だがThe Producer BDBが流し始めたオーディエンス向けの音楽に「やっぱり君のセレクトは最高だね」と、ヘッドホンを付けずにリラックスした雰囲気で描き始めた。

わずか50分足らずでライブペインティングを終えたフローリーは、今回書き上げた作品についての細かい解説もしてくれた。

Flore

「”SUNNY”と描いたのは、(ミューラルは別として)野外で太陽が降り注ぐ中キャンバスに絵を描くのは今回が初めてだったから。絵の中のたくさんの歯は笑顔で、オーディエンスの笑顔に囲まれながらライブペインティングができたから、”ALL TEETH SMILE”を描いたよ。こうやって皆の前で絵を描くチャンスを得たことへの心からの感謝の気持ちは、”BLESSED”の文字に表した。

“CRACK IS WACK”は、NYでキース・へリングが壁にミューラルを仕上げた時のドラッグに対するアゲインストメッセージから。”DOWNTOWN 500″は、1980年代初期のアンディ・ウォーホルやキース・ヘリング、ジャン=ミシェル・バスキアらがいたグループのことを指してるよ。キース・へリングが亡くなった時のルームメイト、ケニー(Kenny Scharf)は今も生きていて絵を描いているんだけど、彼とキース・へリングが当時遊んだりたむろしていた場所が”LOWER EAST SIDE”。

“Thank Keith Mr. Haring”は、皆キース・へリングについて話す時に”キース”と呼ぶけど、代わりに”Mr. へリング”と呼んでみるのはどうかな、という僕からの提案。”83″は僕が生まれた1983年に因んでいて、”NY”と”JAPAN”は僕と日本が繋がっている関係であることを表した。

僕の作品にいつも描く”G”は、僕の二人の祖母(1人は背が小さい”リトル・グランマ”、もう1人は背が高い”ビッグ・グランマ”)のうち、僕に絵の才能を授けてくれた母方の祖母ビッグ・グランマへのリスペクトを表してる。”FOR MOM”には今回のプロジェクトを一番喜んでくれている母を幸せにしたい、息子である僕のことを誇りに思ってもらいたいという思いを込めたよ。

“UFO”も僕はいつも描くんだけど、それは「いつかUFOが降りてきて僕たちを助けてくれないかな。」と思っているから。ピラミッドはキース・へリングもいつも描いていたモチーフとして馴染みがあるけど、ピラミッドのすごい所は誰がどうやって作ったのかが未だに謎なこと。僕の作品もこうやってあっという間に完成するけど、なぜこんなに早く描けるのかは自分でも分からない。ピラミッドは僕を象徴するもののように思えるよ。

最後に、この作品を描く前にミュージアムの中を見て回った時、たくさんのキース・へリングの作品が赤や黒のフレームで描かれていたことが印象に残ってた。そこから影響を受けて赤でフレームを描いたよ。」

 

Christopher Florentino a.k.a. Flore(クリストファー・フロレンティーノ 通称フローリー)

1983年3月9日生まれの現在34歳。NYブルックリン生まれで現在の拠点はフロリダ州マイアミ。アメリカン・ポップアーティスト兼画家。後期キース・へリング、ジャン=ミシェル・バスキアそしてジョージ・コンドらに影響を受け、ポップアートとストリートアートを融合した作品を制作。制作の瞬間、彼の脳内に浮かぶ言葉をレイヤーのように重ねるスタイルは一環しており、観る人によれば、それらがひとつのテーマとして繋がりを持つように受け取れるのも彼の作品の面白みのひとつ。時に彼が愛するもの、情熱が注がれるものが描かれることもあれば、社会に対する怒りや悲しみを描くことも。しかしその時も希望の存在を忘れないのが彼のスタイル。また、LA在住のポップ・アーティスト、The Producer BDBとコラボレーションを行い、パワフルな作品を発表している。これまでにNY、LA、ジュネーブそしてサントロペなど世界各地でショウを行ったことのあるフローリー。2016年のアートバーゼル・マイアミではスイスの高級時計ブランド、HUBLOTの招聘によるエキシビション、2017年はTOMMY HILFIGERのコレクションでランウェイの一部ミューラルを作成するなど、活動の幅、注目度は年々上がっている。

Website http://www.thatartistflore.com
Instagram @byflore
Facebook chrisflore.florentino

▶FloreとThe Producer BDBのインタビューはこちら

 

中村キース・ヘリング美術館

2007年に八ヶ岳に設立された中村キース・ヘリング美術館は、大自然を融和し「混沌から希望へ」というテーマをもとに、日本の現代建築を牽引する北川原温により設計された。へリング作品の奥に潜む「人間が秘める狂気」や「生と死」に向き合うことのできる空間となっている。2015年には展示スペースが増設され、さらに大胆で鋭い感性の建築物となった。あたかも「思考から離れて感性のみで生きる」という禅の思想をも包有するような空間で、ヘリングの作品が今なお発する生命のエネルギーとメッセージを感じることができる。

All Keith Haring Works © Keith Haring Foundation
Courtesy of Nakamura Keith Haring Collection

キース・へリングが活躍していた1980年代のアメリカは、日本の好景気とは裏腹に、インフレの激化と経済の混乱とともに治安が悪化し、まさに混沌とした社会であった。しかし反面ではアンディ・ウォーホールを筆頭にアメリカ現代美術が勢いを増していた時代でもあり、こうしたアメリカの「光と影」を背景にキース・ヘリングのアートは生まれた。へリングはストリート・アートから独特なビジュアルコミュニケーションを確立し、混沌とする社会へメッセージを投げかけ、生涯を通して世界中で子どもたちとのワークショップや、壁画を含むパブリック・アート、ポスター・アート、そして社会的なプロジェクトにも力を注いだ。中村キース・ヘリング美術館でもエイズ・ウォークをはじめとするHIV/AIDS予防啓発のイベント、国際絵画コンクール、災害募金など、へリングの遺志を継承する活動を行っている。

2017年に開館10周年を迎える当館は、1983年に初来日したキース・ヘリングの日本での活動にフォーカスした記念展を開催。世界で初公開となる「招き猫」(1988年・東京で製作)をはじめとする日本文化に影響を受け作成された数々の作品が展示される。

 

中村キース・ヘリング美術館開館10周年記念展
「キース・ヘリングと日本 Keith Haring and Japan: Pop to Neo-Japonism」
会期:2017年2月5日〜2018年1月31日 ※休館日:2017年6月26日~6月30日
会場:中村キース・ヘリング美術館
入館料:一般 1000円 / 学生 700円 / 13〜18歳 500円 ※団体割引・障害者割引あり

 

特別展示
「パトリシア・フィールド アートコレクション Patricia Field Art Collection」展
2017年 7月1日(土)〜2017年11月18日(土)
「アート&ランゲージ:Wosene」展
2017年11月23日(木・祝)〜2018年1月31日(水)

 

中村キース・ヘリング美術館
住所:〒408-0044 山梨県北杜市小淵沢町10249-7
開館時間:9:00〜17:00
TEL 0551-36-8712
E-mail museum@keith.jp
Website http://www.nakamura-haring.com

writer: Atelier506