改めて注目を集めているアボリジナル・アートの女性作家たちによる展覧会が6月24日より開催
2025.05.22

イワニ・スケース《えぐられた大地》2017年、ウランガラス(宙吹き)、石橋財団アーティゾン美術館
© Courtesy the Artist and THIS IS NO FANTASY
アーティゾン美術館にて、2025年6月24日(火)より、「彼女たちのアボリジナル・アート オーストラリア現代美術」展が開催。
地域独自の文脈で生まれた作品への再考が進む近年の国際的な現代美術の動向とも呼応し、改めて注目を集めているオーストラリア先住民によるアボリジナル・アート。2024年に開催された第60回ヴェネツィア・ビエンナーレ国際美術展で、アボリジナル作家の個展を展示したオーストラリア館が国別参加部門の金獅子賞を受賞したことからも、その世界的な評価と関心の高さがうかがえる。
またオーストラリア現代美術では、多数の女性作家が高い評価を得ており、その多くが アボリジナルを出自の背景としている。同館では 2006 年に「プリズム:オーストラリア現代美術展」を開催し、以降継続的に作品を収集。本展は複数の女性アボリジナル作家に焦点をあてる日本で初めての機会となる。
所蔵作家4名を含む7名と1組による計52点の出品作品をとおして、アボリジナル・アートに脈々と流れる伝統文化の息づかいを感じ取ってもらうのと同時に、イギリスによる植民地時代を経て、どのように脱植民地化を実践しているのか、そしてそれがいかにして創造性と交差し、複層的で多面的な現代 のアボリジナル・アートを形作っているのかを考察する。

マリィ・クラーク《私を見つけましたね:目に見えないものが見える時》(部分)2023年、顕微鏡写真・アセテート、作家蔵(ヴィヴィアン・アンダーソン・ギャラリー) Installation view of Between Waves, Australian Centre for Contemporary Art, Melbourne. Photo; courtesy Andrew Curtis © Maree Clarke

ノンギルンガ・マラウィリ《バラジャラ (ジャラクピに隣接するマダルパ氏族の土地)》2019年、天然顔料、再利用されたプリンター用インク・ユーカリの樹皮、ケリー・ストークス・コレクション © the artist ℅ Buku-Larrŋgay Mulka Centre
【見どころ】
1)日本初、女性アボリジナル作家たちによる展覧会
女性アボリジナル作家の多くは、今日のオーストラリアのアートシーンを牽引し、さらに国際的な現代美術の舞台でも存在感を強めている。しかし現代アボリジナル・アートが興隆した1970年代から80年代は、女性は作家として認められず、男性が制作の中心だった。いかにして彼女たちはその立場を逆転し、後のアボリジナル・アートそしてオーストラリア現代美術の方向性を握るようになったのか。本展は、女性アボリジナル作家に焦点をしぼることで見えてくる、オーストラリア現代美術の現在地を、世代と地域を越えた7名と1組の作家から読み解いていく日本初の展覧会となる。
2)アボリジナル・アートの「いま」に注目
現代アボリジナル・アートの特徴のひとつに、制作手法や作品のテーマ、そして用いられる素材の多様性が挙げられる。その豊かな表現力の拡がりに、女性作家が大きく貢献している。例えば、バティック、ジュエリー、編み物、土地神話物語(ドリーミング)を含まない事象的な主題など、それまで芸術作品として受け容れられていなかった創作を、彼女たちは芸術表現に昇華させた。また出品作家のなかには、社会問題、環境問題、過去の歴史、失われた文化の復興など、幅広いテーマを扱っているものもいる。そして、脱植民地化の言説が進むオーストラリアで、女性作家たちはアートを通して積極的にその実践を試みている。本展では、彼女たちの多様な創作活動を丁寧に追い、アボリジナル・アートの「いま」に迫る。
3)オーストラリア各地で躍動する作家たちを一挙紹介
アボリジナル・アートの多様性は、オーストラリアの広い国土に由来する。国際的に高い評価を得る本展の出品作家の地域性は、彼女たちの作品を読み解く鍵のひとつだ。伝統文化が深く根付くコミュニティ出身作家から、エミリー・カーメ・イングワリィ、マーディディンキンガーティー・ジュワンダ・サリー・ガボリ、ノンギルンガ・マラウィリ、そしてコレクティヴとして活動するジャンピ・デザート・ウィーヴァーズを出品する。現在のアボリジナル人口の8割が都市部に住むオーストラリア社会において、都市部出身もしくは都市部を拠点に活動する作家も見逃せない。マリィ・ クラーク、ジュリー・ゴフ、イワニ・スケース、ジュディ・ワトソンらを出品する。

ジャンピ・デザート・ウィーヴァーズ《私の犬、ブルーイーとビッグ・ボーイ》2018年、映像、ジャンピ・デザート・ウィーヴァーズ、NPYウィメンズ・カウンシル Image by Jonathan Daw. © Tjanpi Desert Weavers, NPY Women’s Council

ジュディ・ワトソン《赤潮》1997年、顔料、パステル・カンヴァス、ニューサウスウェールズ州立美術館 © Judy Watson / Copyright Agency, Image © Art Gallery of New South Wales
【開催概要】
タイトル: 彼女たちのアボリジナル・アート オーストラリア現代美術
会 期: 2025年6月24日(火)〜 9月21日(日)
会場: アーティゾン美術館 6・5階展示室
開館時間: 10:00 〜 18:00(毎週金曜日は20:00まで)*入館は閉館の30分前まで
休館日 : 月曜日(7月21日、8月11日、9月15日は開館)、7月22日、8月12日、9月16日
入館料(税込):日時指定予約制(2025年5月24日(土)よりウェブ予約開始)
ウェブ予約チケット 1,800円、窓口販売チケット 2,000円、学生無料(要ウェブ予約)
*予約枠に空きがあれば、美術館窓口でもチケットをご購入いただけます。
*中学生以下の方はウェブ予約不要です。
*この料金で同時開催の展覧会をご覧いただけます
スペシャルサイト:https://www.artizon.museum/exhibition_sp/echoes_unveiled/
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