米原康正 × 中野毅(Skoloct) 対談
2017.04.17
独自の世界観を放つ作品で世界中にファンを持つフォトグラファーの米原康正氏が、原宿の「Skoloct」にて、久しぶりとなるエロを全面に打ち出した個展を開催(展示はすでに終了)。「Skoloct」オーナーで、原宿生まれの不思議な生命体、スコロクトの生みの親であるアーティストの中野毅氏とともに、長年、裏原シーン、ストリートシーンを見てきた2人が「エロ展」開催の経緯やエロの現状を語る。
―——エロ展をやることになったきっかけは何ですか?
Skoloct:ヨネちゃんと自分が会ったのはハタチくらいの時で、目黒の小さいアパートで、そこにはいつも女の子がいっぱいいましたね。
米原康正:ちょうどegg(*1)を作ってた時だからね。
Skoloct:ヨネちゃんの見せてくれたアルバムは、顔射された顔とかおっぱいがいっぱい並んでるコラージュだらけで昭和っぽかった。当時は他に誰もやっていなかった作風で、俺は結構そういうヨネちゃんが好きだった。
米原康正:ここ最近は中国で仕事をすることが多くて、エロだと中国に持っていけないし、制限されていて、エロはやっていなかった。そうすると作るものが限られてきて、大胆に昔みたいにやれないかなと思っている時に、「エロやれば?」と占い師に言われて。
Skoloct:原宿で占いやっていてGINZA(雑誌)とかにも出ているジョニー楓っていう人が結構仲良くて、会った時に「やれば?」って言われたんだよね。
米原康正:「エロ、今年どうかな?」って聞いたら「エロでしょ!やってください!」って言われて(笑)。これはもうやるしかないなって思った。
―——今回のエキシビションではエロの中でも”萌え”なエロと、”アート”なエロを両方混ぜたんですか?
米原康正:一応、テーマは「エロの総合商社」です。
―——エロの玉手箱みたいな感じですね!
米原康正:エロに関するものは何でも出てくるみたいな。エロは今すごい少ないからね。
―——エロは最近、ヨネちゃんだけじゃなくって世間全体的にあんまり出てない感じですか?
米原康正:足りてないかも。
Skoloct:俺はあんまり足りていないとは感じてないけど。エロ本見れば満たされるし。
―——でも、芸術やアートはちょっと違いますよね
Skoloct:いつも話すんだけど、ヨネちゃんの感じのエロを撮る(創る)人は日本にはあんまりいなくて、日本人はやっぱり日本人ぽい感じになっちゃう。
―——展示会に来ているお客さんの反応はどうですか?
Skoloct:いいと思います。バカ売れしてます。ヨネちゃんはここでやる展示会が初めてっていうのもあると思うけど、バカがつくほど売れてる。
―——女性も男性もいますか?
Skoloct:はい両方です。男の子も買うし、女の子は写真を撮ってインスタにあげてる子が多い。最近は雑誌よりインスタの方が早いですからね。
米原康正:そういう状況で、会場に来ないと作品が見れないのはやっぱり重要かなって思うね。インスタばっかりだと結局来てくれないからね。
Skoloct:それはあるね。俺もこの間個展やってインスタで作品を見せちゃったら、あんまり来なかった気がしたんだよね。だからやっぱ良くないのかなとか思って。
米原康正:今回のエロ展は、本当に主要な写真はポスターでしか出してない。SNSでは変なの(目を引くもの)ばっかしか出さないようにしてて。見に来て、(スマホの画面のサイズよりも)引き延ばしてあったり雰囲気変わるじゃない。
―——会場に観に来ている人とか、フレームの質感とか、作品の奥行きとか、色々実際に観ないと感じられないことばかりかと思います。音楽とかもそうだけど、実際足を運んで自分の目で見たり、耳で聴いたりすることは大切ですね。
米原康正:そうなんだよね。
―——そういえば、今ヨネさんのエロページ連載ってあるんですか?
米原康正:連載は昔Warpでやってたけど、今はないね。今は雑誌でエロページ持ってるところが少ない。
Skoloct:ヨネちゃんも中国メインで活動していたから、エロにアプローチしなかったよね。
米原康正:確かに、俺はずっと(被写体として)女の子を追っかけてばっかで、最近は原宿系の女の子たちばっかだった。原宿の子たちって、セクシーとかそういうのじゃないから。
―——今回のために撮った作品とかもありますか?
米原康正:作品は、今まで撮ったけどあんまり出してこなかったやつです。今まであまり写真写真したものは出してなかったんですけど。
―——展示作品の中には「あぁヨネちゃんってこれだよね」ってものが結構色々ありますね。そして、エロの写真なんだけど、オシャレだしアートですね。家とかに飾るこういうアートを求めてる人はやっぱり多かったんですかね。
Skoloct:多かったと思う。(レセプションパーティーの時には)ヨネちゃんのパーティーだし酒だけ飲みに来るやつが多いかなと思ってたんだけど、そうでもなかった。みんなちゃんと見に来てた。例えインスタにアップするだけだとしても興味が感じられていい感じだったよ。あんまり真面目すぎる展示をしてもつまらないので。
米原康正:一番安心したのは皆が気軽に来れるというか、集まれる場所にできたこと。最近はここに来て知らない人同士で仲良くなったりしているので。
Skoloct:新しい原宿が生まれてる感じがします。
―——この場所では、定期的にこうやってエキシビションをしてるんですか? ご自身の作品だけじゃなく。
Skoloct:自分のもついこの間やったんですけど、基本、他の人のばっかりやってる。
米原康正:若い子達がサクッと作品展を作れるような場所が、原宿にどんどんなくなってるのがやっぱりおかしいと思う。昔の裏原は、ちょこちょこ皆で集まって、いろんな作品展をたくさんやってた。最近はどんなギャラリーも結局はスポンサーがついてないとできない所ばかり。個人でやっていたとしても、外国人か企業。日本人がやる時に企業がついてるのは悪くないけど、それだと若い子達が全く出られない。この原宿や渋谷の街で若い子たちが前に出られない状況はおかしいから、若い子たちを育てていこうねっていう話はよくしている。
Skoloct:でもこれだけ絵や写真を売るのはやっぱり皆あまり出来ていない。俺は自分の絵を自分で売るけど。
―——それにしても、日本人はあまりアートを買わないですよね。
Skoloct:買わないですね。アメリカだと、「今日100万円の絵をエミネムに売ったんだよね」とか、そういうのは普通なはずなんですけど、日本は絶対ないので、だから安い値段ででも(買って)持っていってもらえれば、俺らもまた次が描ける。やっぱり何かが返ってこないと描く気にはなれないじゃないですか。だから今は俺はそういう感じで売っていきたいなと思ってます。
―——海外だと自分でいいと思ったら、アーティストが誰かとか知らなくても買っていくんですよね。「あ、家に飾りたい」っていう感覚で。
Skoloct:そう、お花買うみたいな。
―——多分5、6万円くらいだったらその感覚ですね。それより上がってきちゃうとやっぱりもうちょっとじっくり見ると思うんだけど。でも、海外では基本サラッと買ってきますよね、皆。
米原康正:アートが身近にないんだよね、日本は。あくまでも誰かがいいって言ってたからいいみたいなところあるんだよね。これからもっと変わっていけばいいと思ってる。
*1)1995年に創刊され、約20年間ギャル文化を発信してきた雑誌。
■米原康正プロフィール
編集者、アーティスト。世界で唯一チェキをメイン機材とするアーティストとして、”女子に人気のある女子を見つける”という特殊能力で、コギャルからゆめかわ、自撮りラップなど時代に先駆けた女子ムーブメントを次々と世に送りだしている。海外との仕事も多く、香港台湾中国での活動も長く中国版twitter、”微博“のフォロワー236万人。日本人が忘れがちな日本の素晴らしさを日々世界に発信している。
■中野毅(Skoloct)プロフィール
writer: Atelier506