美術家・アニメーターとして活躍する若手作家、米澤柊の個展「泳ぐ目たち」が西麻布にて開催
2025.05.09

米澤柊「目配せ」2025年
©︎Shu Yonezawa, Courtesy of SNOW Contemporary
米澤柊の個展「泳ぐ目たち」が、SNOW Contemporaryにて5月31日(土)まで開催。
同廊にて2回目の個展となる米澤は、美術家・アニメーターとして活躍する若手作家だ。また、日本で初開催となるLVMH Métiers d’Artのアーティスト・イン・レジデンスプログラムにおいて多数の候補者の中から選出された注目度の高いアーティストの一人でもある。
本展「泳ぐ目たち」はアニメーションにおける残像表現の技法「オバケ」に着目した『オバケのスクリーンショット』シリーズで構成されている。
米澤が「見ること」の拡張が進んだとき、心と身体は どのように変化していくのかを想像し生み出した「泳ぐ目」から着想を得て、魂と身体、生命の進化を、「見る」ことの 進化という視点から、その先にある身体のかたちを探る展覧会となっている。
米澤は、まだ見ぬ未来において人間の肉体も、アニメーションキャラクターがもつ様々な身体のように、魂と肉体が光と影を受け入れ、やがて空気に漂うように透明となっていく進化後の世界に想いを馳せる。
米澤のオリジナル作品7点、プリント作品4点を含め、全て新作で構成されている。
■アーティストステートメント
私たちは、どのように「見る」ことが進化していくのだろうか。
視覚情報は単なる網膜への刺激ではなく、日常に溶け込んだデジタルツールやiPhoneのスクリーンの向こう側、そして現実の記憶の残像が交差することで、新たな「見る」行為を生み出している。目を閉じても、あったりなかったりするイメージや映像が浮かぶように、私たちの視覚はすでに物理的な光だけに依存するものではなくなった。
この「見ること」の拡張が進んだとき、心の身体はどのように変化するのか。身体中が目になり、やがて「私」そのものが目になる未来が来るのだろうか。
そんな未来の生きものを想像する。「泳ぐ目」──自身が2024年に描いたこの絵は、今知っている生物の形がさらに進化した後の断片的な描き起こしであり、生物の系統樹の境界を形取る中で生まれたアニメの絵でもある。
身体の外殻が進化し、表面が退化したその先にも、目は光がある限りきっと必要であり続ける。しかし、それはただの器官ではなく、身体そのものへと変化していくのではないか。人間が消え去った後の地球の環境は、今とは異なり、乾燥もなく、あたたかくもないかもしれない。その中で魂はただ漂い、新しい視覚を持った存在になるのかもしれない。
ディスプレイに流れるアニメーションを見て、細く強い身体に、弱く美しい身体に、あるいは何か別の存在になりたいと思ったことはないだろうか。
人間の肉体は思っているよりもやわらかく、やがて透明へと変化していく。しかし、それはネガティヴな変化ではなく、自然とともに進むポジティブな進化だ。透明になった肉、より柔らかくなった骨。支える構造が変わることで、魂もまた変容する。
空洞の魂は、今もつ瞳孔のように光と影を受け入れる。そして目は、単なる記号ではなく、身体そのものへと変わっていく。
本展は、2021年頃から制作している「オバケのスクリーンショット」シリーズの展覧会である。
「いないがいる」──魂と時間の境界としてのアニメーションのオバケを描きおこし、「見る」ことの進化、その先にある身体のかたちを探る。
米澤柊

米澤柊「ただ漂ってる」2025年 ©︎Shu Yonezawa, Courtesy of SNOW Contemporary
【プロフィール】
SHU YONEZAWA/米澤 柊
東京生まれ。アーティスト、アニメーター。現在のデジタルアニメーションにおけるキャラクターの身体性と、現実空間の生き物が持っている心の身体性と感情について、またそれらアニメーションが生きる空間の空気を制作している。
LVMH メティエ ダール 第 9 回「アーティスト・イン・レジデンス」選出。
主な作品/個展に「ハッピーバース」(2023年、PARCO museum tokyo)、「うまれたての友達」(2023年、BLOCK HOUSE)、「名無しの肢体」(2022年、Tokyo arts and space本郷[OPEN SITE7])、「絶滅のアニマ」(2022年、小高製本工業跡地[惑星ザムザ])、「劇場版:オバケのB′(2022年、NTT ICC)、共同企画音楽イベント「自然の中で起きている美しい現象すべて」(2022~2023)。
X :https://x.com/mendakoanime
Instagram:https://www.instagram.com/mendakoanime/

©Azusa Yamaguchi
【開催概要】
タイトル:米澤柊「泳ぐ目たち」 / Shu Yonezawa “Swimming eyes”
会期:2025年4月18日(金)〜 2025年5月31日(土) 13:00 – 19:00 *日・月・火・祝日は休廊
会場:SNOW Contemporary(東京都港区西麻布2-13-12 早野ビル404)