雨宮庸介の東京の美術館で初となる個展「まだ溶けてないほうのワタリウム美術館」が12月21日より開催
2024.12.20
Apple, 2023年 林檎材に油絵具
雨宮庸介の東京の美術館で初めての個展が12月21日(土)より開催する。本展では作家の25年前の最初期の作品をそれ以来ぶりに出品。ワタリウム美術館を舞台に制作された最新 VR 作品を中心とし、かつ、「溶けたりんごの彫刻」や「石巻 13 分」の記録映像「、1300 年持ち歩かれた、なんでもない石」のペーパーなど、雨宮の代表作を一堂に体験できる展覧会となっている。
最新作のVR作品は、VRのヘッドマウントディスプレイ(HMD)をかぶって体験する。「VR はいまだ素人だけどVとRについては25 年以上のベテラン」と話す雨宮らしく、通常「ここではないどこか」に行くための HMDをあえて「どこかではないここ」に再注目させるためのデバイスとして定義し直す。 2024年春に山梨県立美術館からはじまり、同年たてつづけに行われた、大地の芸術祭、Kyoto Interchange などで発表されたVR作品への取り組みの一年間の総決算というべき新作だ。美術を意識的に始めた大学生時代に通ったというワタリウム美術館での個展が、アーティストにとってどのような影響や化学反応をもたらすのか注目したい。
■アーティストステートメント
今回の展覧会タイトル「まだ溶けてないほ うのワタリウム美術館」は「溶ける以前の状態が継続している」という、実はデュシャン以降のアートをアートたらしめている「過去完了」をそっと召喚しようと試みます。同時 にこれは、平和にみえる無関心な日常さえも実は「まだ戦争が起きていないほうの静寂」 でもあることを顕在化せんとするものです。
今回の展示は、活動初期から現在までを部分的ながらも一貫して見通せる構成をとります。一番古いものは 2000 年初頭の作品群で、一番最近のもの、つまりこれを書いている時点でまだ存在していないものは、設営期間にここで撮影されるVR 作品です。本来「ここではないどこか」に自身をカジュアルに転送するために設計されているはずのVR HMD(ヘッドマウントディスプレイ)を使用し つつ、むしろ「どこかではないここ」に丁寧に連れ戻し、この世界そのものについて肯定を試み、 仮に祝福にまでこぎつけると「この世界」と「この世界」が秘密裡に並走しはじめる。そこで獲得されるべきは大きな物語における普遍性ではなく、普遍性に適ったパーツを集めて再構成される「新しい私たち」、または「わたくしたちといふ現象」もしくは「普遍性 2.0」のようなもの。そしてそれらの創生はいかにして可能か。
そんな仮説を今読んでいるあなたにそっと耳打ちすること、それこそが僕なりのアートの実践であり本展覧会で試みられることです。
雨宮庸介
【プロフィール】
雨宮庸介
山梨県在住。1975年茨城県生まれ。Sandberg Institute(アムステ ルダム)Fine Art Course 修士課程を主席にて修了。ドローイング、 彫刻、パフォーマンスなど多岐にわたるメディウムによって作品を制作。「六本木クロッシング2010 展:芸術は可能か?」(森美術館 )、「Wiesbaden Biennnale」(ヴィースバーデン市内各所)、「土とともに美術にみる〈農〉の世界―ミレー、ゴッホ、浅井忠から現代のアーティストまで―」茨城県立近代美術館(2023)、「青森 EARTH2019:いのち耕す場所-農業がひらくアートの未来」青森県立美術館、など国内外の美術館での展覧会に多数参加。「Reborn-Art Festival 2021-22」、「国東半島芸術祭」などの芸術祭にも参加している。2014-3314 年のプロジェクト「1300年持ち歩かれた、なんでもない石」を開始。リンゴや石や人間などのありふれたモチーフを扱いながら、超絶技巧や独自の話法などにより、いつのまにか違う位相に身をふれてしまう感覚や、認識のアクセルとブレーキを同時に踏み込むような体験を提供している。
【開催概要】
タイトル:雨宮庸介展「まだ溶けてないほうのワタリウム美術館」
会期:2024年12月21日(土)〜 2025年3月30日(日)
休館日:月曜日(1/13、2/24は開館)、12/30-1/3
開館時間:11:00 〜19:00
入館料:大人 1,500円 / 学生(25歳以下)1,300円
*会期中、何度でも入場できるパスポート制チケット
主催:雨宮庸介展実行委員会[ワタリウム美術館、SNOW Contemporary、
一般社団法人Reborn-Art Festival、株式会社秋葉機関、木村木品製作所]
会場:ワタリウム美術館(東京都渋谷区神宮前3-7-6)
公式ホームページ:http://www.watarium.co.jp/
■イベント開催概要
For the Swan Song 2024
毎週土曜日17:00〜18:00に雨宮庸介による「 人生最終作のための公開練習」を実施。
Swan Songとは、最終作や絶筆のことを、白鳥が死に際に鳴ことをなぞって表す言葉。
* 当日有効の「 雨宮庸介展」入場券をお持ちの方は 、 自由に参加可能。