バイシクルメッセンジャーのドキュメンタリーやSupremeなどの広告写真で知られるピーター・サザーランドが、9年ぶりの展覧会を開催!
2025.01.28
フォトグラファーでフィルムメーカーのピーター・サザーランドの展覧会がGALLERY TARGETにて開催。9年ぶりとなる今回の展覧会では、写真を使ったコラージュ作品を中心に近作を披露する。
本展覧会は、これまでに撮り溜めていた写真や使っていたアウトドア用品の一部、見つけた布、旅をしている時に見つけた物などをキャンバスに作品集を編集する作業の様にはりつけ、縫い合わせた作品で構成されている。
一つのキャンバスに様々なストーリーが展開していて見応えのある作品が並ぶ。サザーランドの事を知っている方には写真というメディアムから離れはしたが、懐かしい要素を見出す事ができ、初めて作品を見る方には彼が世界に点在するどんなエレメンツにフォーカスを置いて作家活動をしているのかが垣間見える展覧会となっている。
■美術ライター サム・コーマンのコメント
「ポルケ、ゲレンデを滑る」
ピーター・サザーランドは父親だ。それは一見、アーティストの創作活動には関係ないように思えるが、実はそうではない。親になると焦点が変わり自分の子どもが主役になるのだ。子どもが直感的にコラージュを作り上げていく様子を見ていると、嫉妬すら覚えることがある。自分の青春時代の大切さを手放し、その代わりに一瞬の盗まれた時間や、記憶の断片のような、もっと儚いものに惹かれるようになるのだ。
ピーターのキャンバスには、このエネルギーが反映されている。それらは部屋に漂う音楽のように、雰囲気に満ちている。彼は絵画の革新を追い求めているわけではなく、使い古された親しみやすさに寄り添い、古びたバイカーの革チャップスや、スケーターのボロボロになったカーハートのパンツのように、生活感がある。また彼は現実の世界やサブカルチャーを冒険する人で、若者文化の境界線を追いかけている。彼は、自分と同じ道をハイキングしてほしいし、同じ斜面をスノーボードで滑り降りてほしいと思っているのだ。
ピーターがこの展示会用の作品を初めて送ってきたとき、冗談でこう言った。「君は『ジグマー・ポルケ』ならぬ『ジグマー・スロープス』だね!」これはうまく訳せないかもしれない(大抵のテキストメッセージはそうだ)が、その感覚は心に残る。ピーターのイメージへのアプローチは、アイデンティティ形成と結びついているように感じられる。彼はストリートサインの写真と、手描きのBlack Labelスケートボードのロゴを並置させるかもしれない。それによって、そのマークを自分のグラフィティの歴史へと引き戻しているのだ。それらの作品は抽象へと進んでいくが、同時にトラッパーキーパー(多彩な装飾が施されたバインダー)のように、外の世界のテクスチャも運んでくる。たとえば、空っぽのニューヨークの通りや、あるいはコロラドのヒッピー的な風景、例えばキノコの上のてんとう虫のようなものだ。
絵画は通常、孤立したオブジェクトとして扱われ、ギャラリーの中立的な空間にきちんと収められる。しかし、ピーターの絵画はじっとしていない。彼の作品は、落ち着きのない脚を動かす人や、5分だけ空いた父親が何かを作らずにはいられないような、そんなせわしなさを持っている。彼の作品は注意力の渦を巻き起こし、単なるイメージだけでなく、それを生み出す行為そのものをも捉えていく。これらの絵画は、彼の制作プロセスの真の手引書のように感じられる。数多くの月、火の輪、星々を伴い、彼自身の個人的な宇宙観そのもののようでもある。ピーターは普段は写真家だが、これらの作品の中では、彼自身の最も正直なイメージを生み出したのかもしれない。
サム・コーマン
【プロフィール】
Peter Sutherland(ピーター・サザーランド)
1976年生まれ。コロラド在住。ドキュメンタリー・フォトグラフィーのテクニックを使い、隠れた笑いや美を撮り続けているフォトグラファーでフィルムメーカー。2001年、ニューヨークのメッセンジャー達を撮ったドキュメンタリー映像「Pedal」を発表。サンダンス映画祭に出品され注目を集める。2003年には「Gator」ことマーク・ゲイター・ロウゴウスキーを中心にした1980年代のスケートボードシーンを追ったドキュメンタリー「Stoked : The Rise and Fall of Gator」で撮影監督を務めた。2004年に初の写真集「Autograf: New York City’s Graffiti Writers」、2006年にDVD/フォトブック「Pedal」(共にPower House Books)を発表。以後、精力的に数多くの写真集を発売する傍、「i-D」、「VICE」などのエディトリアル、「POPEYE」の連載、ノースフェイス、アディダス、ステューシー、デュラセル、フィルソン、スーリー、ラコステ、パラディウム、シュプリーム、ナイキなどの広告写真を手掛ける一方で、リチャード・プリンスや自身が興を持つアーティストや題材のドキュメンタリーを撮り続ける。
Instagram:@petersutherland
【展示概要】
タイトル:『Sweater Weather』by Peter Sutherland
会期:2025年1月28日(火)〜 2月18日(火)
時間:12:00 – 19:00 ※月曜・日曜・祭日休廊
会場:GALLERY TARGET(東京都渋谷区神宮前5-9-25)
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