女性性を「生み出す力」として描くダイ・インの東京初の展覧会が、3月6日より銀座で開催
2026.03.06

中国 四川省出身のアーティスト、ダイ・インの東京における初の展覧会『Lines of Infinity(無限の線)』が、2026年3月6日(金)よりホワイトストーンギャラリー銀座新館にて開催される。
北京とニューヨークを拠点とするダイ・インは、伝統的な中国の書や水墨画の精神、その技法を採り入れつつ、現代的な抽象表現、マテリアルの実験、そして精神的な探究を深めるクロスメディア・アーティスト。幼少期からの書道の鍛錬は、彼女をして「線」を静的な形態ではなく、呼吸、リズム、時間感覚、動作の痕跡として理解せしめた。それは現在も彼女の制作に通底する基盤となっている。
ダイ・インの芸術言語は、多層にわたる制作プロセスと循環的な構造に根差している。おもに中国の宣紙、絹、油絵具、中国画の顔料および日本の顔料、アクリルなどを用いながら、東洋的な素材の伝統を西洋の媒体と対話させ、反復的な染色や塗り込み、身振りを連想させる筆致の介入、などを通して複雑な表層を構築していく。
螺旋状の形態、流れるような線描、変転する密度が作品の中に繰り返し現れ、エネルギーの循環、生命のサイクル、ひいては身体、自然、宇宙が互いに浸食しあう様を想起させる。彼女の実践は、抑制と感情の大胆な発露との狭間を自在に行き来し、素材が浸透し、重なり合い、変容することで、作為的でありながらも有機的な作品として結実してゆく。
ダイ・インの作品は女性の主体性、集団的記憶、個の存在とより広範な社会・宇宙的構造との関係をコンセプトとしている。自身が「地母性(ジオ・マターナル)」と呼ぶところの長期的な研究は、女性性を固定されたアイデンティティとしてではなく、包括性、連続性、そして再生を強調する「生み出す力」として位置づけている。ダイレクトな物語(ナラティブ)を提供するというよりは、作品は感性の磁場として機能する。絵画を完結したイメージではなく、動的なプロセスの体験として鑑賞者をいざなう。
今展では、ダイ・インの作品は草間彌生と田中敦子の数点の作品と並置される。歴史的・文化的文脈は異なるものの、反復、身体的実在、見えなき力の可視化、といった共通項で彼女たちの作品は共鳴しあう対話を形成している。展示は比較や時系列的推移ではなく、時を超えてエネルギーが呼応しあう空間を創出することを目指す―芸術表現は収斂しては増幅し、境界なき無限の可能性へと向かうのだ。

ダイ・イン 《Endless Life 3》2025,、90.0 × 90.0cm、紙・ミクストメディア

ダイ・イン 《Endless Life 5》2025,、96.0 ×
130.0cm、紙・ミクストメディア
【プロフィール】
ダイ・イン(Dai Ying/戴瑩)
ダイ・イン(戴瑩、1983年中国・四川省生まれ)は、現在北京およびニューヨークを拠点に、中国と西洋という二つの文化圏を横断して制作を行うクロスメディア・アーティストである。5歳より伝統的な中国の書と水墨画の体系的な訓練を受け、東洋の精神性と現代的な表現とを融合させた独自の芸術言語を段階的に発展させてきた。ダイ・インの制作は、女性の力や地政学的アイデンティティへの思索を基盤としている。複数のメディアの多層化、素材の混淆、象徴的構造を通して、現代社会の構造と生命の宇宙的な論理との間に潜む命、目に見えない繋がりを探求している。彼女は「ジオ・マターナル・マトリックス(Geo-Maternal Matrix)」という概念体系を提唱し、女性の芸術は単なる権利獲得の追求を越え、より高次元かつ広範なフェミニズムの力を実現するための、建設的な精神的生成へと向かうべきであると主張している。彼女の作品において、ジオ・マターナリズムは象徴であると同時に、包摂性、育成、循環の型によって特徴づけられる方法論でもあり、それらは新たな視覚秩序へと昇華されている。螺旋構造、多層的な染色と彩色、血脈を想起させるイメージ、植物的母体といった要素を通して、ダイ・インはエネルギーの流動、生命の循環、文化の進化といった視覚的論理を構築している。
【開催概要】
タイトル:ダイ・イン個展『Lines of Infinity』
会期:2026年3月6日(金)〜4月4日(土)
会場:ホワイトストーンギャラリー銀座新館(東京都中央区銀座6-4-16)
営業時間:11:00 – 19:00
休館日:日曜 / 月曜