矛盾を抱えながら存在する自分を受け止める。夏目らんによる個展”mercury”が8月5日より有楽町にて開催
2026.08.03

米原康正がキュレーションするフラッグシップギャラリー「阪急メンズ東京7階 +DA.YO.NE.GALLERY 」にて、8月5日(水)より夏目らんによる個展、”mercury” が開催。
■アーティストステートメント
私は長い間、何者かになりたかった。
生まれながらに、自分という存在への矛盾を感じていたから。
けれど生きるほどに、人間も世界も、単純な言葉では捉えきれないのだと感じるようになった。
“金属”と聞けば、多くの人は固く冷たいものを思い浮かべるだろう。
しかし、水銀は金属でありながら液体であり、条件によっては固体にも気体にもなる。
一つの性質だけでは捉えきれないその在り方に、私は自分自身の問いを重ねるようになった。
かつての私は、一つの答えを探し続けていた。
けれど今は、一つの言葉や一つの形では語り尽くせないことこそが、存在の自然な姿なのではないかと感じている。
私もまた、矛盾を抱えながら存在している。
その矛盾を許容し、愛していきたい。
■キュレーターコメント
一時期、彼女は表現の迷いの中にいた。そのとき僕は、無理に新しいものを探すのではなく、一度、描き始めた頃の自分に戻ってみたらどうだろうと提案した。油絵を離れるのではなく、原点だったデジタルで小さな作品を描きながら、「描くこと」そのものの楽しさを思い出してみる。その時間は決して後戻りではなかった。
そして今回、彼女は再び油絵の前に立った。
同じ場所へ戻ったのではない。一度原点を通り抜けたからこそ、以前とは違う景色が見えるようになったのだと思う。
夏目らんの作品には、いつも言葉にならない感情が漂っている。美しさだけでは語れない不安や孤独、心の揺らぎ。それらを無理に整理することなく、画面の中へ静かに置いていく。その誠実さが、彼女の作品にしかない空気を生み出している。
彼女はこれまで、自分自身と向き合いながら描き続けてきた。だから作品は、自分を主張するためのものでも、誰かを説得するためのものでもない。ただ、自分の内側にあるものと正直に向き合った時間の痕跡なのである。
だからこそ、見る人もまた、自分自身の感情と静かに向き合うことになる。
今回の展示で描かれているのは、一つの答えではない。
描き続けることでしか見えない景色があり、描き続けることでしかたどり着けない場所がある。その時間を経たからこそ生まれた作品たちは、以前よりも穏やかで、以前よりも深く、人という存在そのものを見つめているように思える。
夏目らんは、完成された自分を描く作家ではない。
描きながら変わり続ける自分を、そのまま受け止めようとする作家なのである。
ーー米原康正
【プロフィール】
夏目らん|Ran Natsume
誰もが抱えている、普段見せない痛みや言葉には出来ない内側を可視化する。
Visualize the pain that everyone has, the pain that they don’t usually show, the inner pain that cannot be expressed in words.
【開催概要】
タイトル:夏目らん個展 “mercury”
会期:2026年8月5日(水)~9月1日(火)
会場:阪急メンズ゙東京 7階 +DA.YO.NE.GALLERY
時間:平日12:00~20:00 土日祝11:00~20:00(※最終日のみ17:00までの営業)
RECEPTION:8月8日(土)17:00から20:00