人間の内的な変容と回復力を体現した新たなシリーズを展示。Ichi Tashiroの個展「verve」がGallery Commonにて開催!
2024.11.26
Ichi Tashiroの個展「verve」が原宿のGallery Commonにて開催。Tashiroはこの2年間、抽象絵画への彫刻的なアプローチを新たに探求し、洗練させてきた。本展では、はじめてその成果を大々的に発表する。新しく作られたシリーズでは、これまでの作品で主に使われてきた紙のコラージュ技法に、カービング、スカルプティング、筆跡をつける技法を組み合わせている。彫ったり貼ったりする過程を傷跡や治癒と同一視することで、Tashiroの作品は身体のように、トラウマと変容の循環を表す器となり、複雑に絡み合う人間の経験の美しさをとらえます。
近年、Tashiroの作品はシュルレアリスムに由来するようなイメージから、壮大に広がる内的感情の風景へと向かっている。Tashiroの作品からわかるように、それぞれのペインティングには私的な意味が込められ、作家が日々抱く感情を収める精神的な器としても機能している。もっとも大きい変化は、平面から逸脱したことだ。彫刻や彫金の道具を使って絵画パネルに向き合い、揺るがない肉体の力強い存在感を放つ作品を制作している。
今回の作品は、木彫りのレリーフから始まり、その上に紙を何層にも貼り付け、油性インクを染み込ませている。これまでの作品と同様、Tashiroは紙にこだわり、作品の核に位置付ける。紙という素材は、表面に様々な質感を与えるだけでなく、立体的な造形が可能になる。Tashiroは、何層にも重なった紙を使い、木のくぼみとバランスを取るようにして隆起や突起をつけている。
油性のインクを用いたり、大胆なストロークを感じさせる身体的な顔料の表現を初めて取り入れたりすることでTashiroのアプローチはさらに進化した。ダイナミックな動きと入念なディテールを交互に施すことで、作品の表面を純粋な感情によるエネルギッシュな表現に変貌させ、細部まで作り込んだプロセスに予測不可能性と偶然性を取り込んでいる。
力強いカービング、荒っぽいストローク、ぶつかり合う色、そして対照的な質感を組み合わせ、筆跡をつけるための型破りな方法によってTashiroは、ペインティングにおける慣習を壊している。エッチングされた表面は、キャンバスの平面的な広がりとは異なり、各作品に込められた作家の身体性を鑑賞者が感じ取れるような触覚的な体験をもたらしている。さらに重要なのは、平面を地形学的なものに変えることで、Tashiroの作品がもはや鏡や扉としての役割を果たすのではなく、むしろ、もろく不完全な人体の柔和な肉体を想起させることだ。質感が添加され、何層にも重なった表面は、傷だらけでありながら、目に見えない絶え間ない生命力に支えられている私たち自身の皮膚に似ている。彫り、重ね、彩色する過程は、作家にとって、傷ついた後に待っている再生のプロセスのようである。こうして、作品はカタルシスの場となる。生々しい感情を支える作品は、人間の回復力に対するTashiroの畏敬の念を表しており、生き延びるための普遍的な物語を体現している。そして、それは変容していくことを美しいとする共通の考えを促す。
【プロフィール】
Ichi Tashiro
1984年愛媛県生まれ。Tashiroの活動は、彫刻、イメージ、マーク・メイキングを多様に組み合わ
せています。彼の力強く印象的な抽象画は、木彫の技法と、紙、新聞、本、雑誌、顔料、インク、マーカーなどの様々な素材を用い、ペインティングと立体を横断する彫刻的なコラージュを制作します。Tashiroの作品は、物質とイメージによる表現のさまざまな可能性を模索しながら、進化し続けていますが、セレンディピティと可能性は、彼のキャリア全体を通して一貫したテーマであり続けています。彼の作品は、私たちの感情を抑圧しようとする硬直した社会構造に反旗を翻し、創造性と情熱という厄介で筆舌に尽くしがたい人間の本質を伝える作品を作り出そうとしています。Tashiroの作品は、香港、パリ、ニューヨーク、ロサンゼルス、アムステルダム、ベルギー、デンマーク、シンガポール、東京などで個展やグループ展に出品されています。また、アートバーゼル香港やASIA Now Parisなどのアートフェアにも参加しています。
【開催概要】
タイトル:Ichi Tashiro 「verve」
会期:2024年11月23日(土)〜 12月22日(日)
会場:Gallery Common(東京都渋谷区神宮前5-39-6 B1F)
時間:12:00-19:00 (水~日) *月、火 休廊
問い合わせ:contact@gallerycommon.com