清澄白河でアートを巡る旅
2017.08.12
江戸時代からの深川の歴史と下町の魅力に加え、東京都現代美術館が1995年に開館してからはアートの街として知られる清澄白河。サードウェーブコーヒーの代表格であるブルーボトルコーヒーの日本一号店がオープンしてから続々とコーヒー店がオープンし、今やコーヒーの街としても名を馳せる。
そんな清澄白河に20以上点在するアートギャラリーのうち6ギャラリーを巡る旅をお届けする。
■EARTH+GALLERY
木場公園よりほど近いEARTH+GALLERY(アースプラスギャラリー)。真っ黒な外観とは裏腹に、一歩中に足を踏み入れると真っ白な空間が広がる。入口右手にはアートショップを構え、二階へ続く階段を上ると、ギャラリーを見渡すように併設されたカフェ&バーが表れる。
「EARTH+GALLERYでは、新しい美術の可能性に挑戦するアートマーケット開拓の場として美術展覧会はもちろん、演劇や音楽イベントなども開催し、幅広い表現の場をお届けしています。
また、アートを買うことをもっと身近に感じてほしいという思いから始まったアートコンセプトショップ「LUCK」では、様々なジャンルレスなアーティストが一つのコンセプトで遊び尽くす空間が、毎月変化する内層とともに繰り広げられます。
カフェ&バーでゆっくりと喫茶を楽しみながら、EARTH+GALLERYの美術作品を観賞していただけます。古い家具の並ぶ落ち着いた空間で、くつろぎのひとときをお過ごしください。
」( EARTH+GALLERY 加藤さん)
展示会情報
石川慎平 個展「active」
会期:2017年8月5日(土) – 8月20日(日)
時間:11:00-19:00 ※最終日17:00まで
EARTH+GALLERY
東京都江東区木場3-18-17
http://earth-plus.net/
■ANDO GALLERY
2008年7月にオープンし、2017年7月で10年目に突入するANDO GALLERY(アンドーギャラリー)。理想のギャラリーを追い求め清澄白河に行きついたというギャラリスト安東孝一さんは元々アート、建築、デザインのプロデューサーをしていたそうで、ANDO GALLERYにもこだわりが見られる。古い倉庫を改装した蔦の絡まるギャラリースペースは天井が高く広さがあり、作品と静かに向かい合える空間となっている。モダンなホワイトの建物との対照が印象的だ。
「9年前にこのギャラリーができた頃、清澄白河は美術館とギャラリーしかない正に「アートの街」でしたが、数年前からのコーヒーブームの影響で「コーヒーの街」としても人気となりました。
ギャラリーを訪れる方は、現代美術館から流れてくる人が多かったですね。現在は現代美術館が休館により街を訪れギャラリーを回るアート関係者は減り一般の方が中心となっています。コーヒーのブームもあるのでこの街は段々面白くなってきていると思います。
また一般的に「ギャラリー」と一口に言っても、勝手に入っていいのだろうか、入場料がかかるのかもしれないといったイメージを持たれがちですが、清澄白河という街の在り方の変化のおかげで、ギャラリーに入りやすい風潮ができており、アートを観ることの敷居が低くなってきています。
所属アーティストを決めるためには、自分で学生の卒展を見に行ったり、展覧会に足を運んだりします。ショナ・トレスコットというオーストラリアの若手アーティストも、ドイツのギャラリーの展覧会で見つけ、所属してもらうことになりました。ショナのリスペクトできる所は、世界に出て行くことを恐れていないところで、外に向かうことの大事さや楽しさを若い人に知ってほしいですね。」(ANDO GALLERY ギャラリスト安東孝一さん)
展示会情報
「中沢研展」
会期:2017年9月5日(火)~10月14日(土)
ANDO GALLERY
東京都江東区平野3-3-6
http://www.andogallery.co.jp/
■S.O.C Satoko Oe Contemporary
2016年にオープンしたSatoko Oe Contemporary(サトコ・オオエ・コンテンポラリー)。小名木川にほど近い道路に面したガラス張りのギャラリーは、通りかかるとつい覗いてしまう。
元々は清澄1丁目にあった倉庫街のギャラリーコンプレックスにて勤務していたギャラリストの大柄さんは、街(社会)の片隅に存在する、人々の記憶に残る空間として、現代美術のギャラリーを開きたいという思いを胸にこのギャラリーをオープンした。アートに興味のある方だけでなく、近所の方や、コーヒー散策のついでに寄ってくれる一般の方との関わりが増えたと語る。
「今年2月から3月まで、「川 – 角田純+大原大次郎+金氏徹平 by torch press + ditto + Satoko Oe Contemporary」という展覧会を開催致しました。その際初めてデザインや出版の方と協働作業を行ない、これまでにない仕事の仕方をしてみたりして、私にとってもとても刺激的ないい機会となりました。
また期間中にはギャラリー内でバーも3日間夜間営業し、美術だけでなくデザインや出版関係の方々、ご近所の方々までお越しいただけて、美術を中心に皆で語らう貴重な場となりました。
その時のエキシビションでは自分がこれまで現代美術だけで仕事をしてきて関われなかった方達と一緒に仕事をしてみたいなと思い、デザインの方と出版の方と一緒に企画をしたんですけど、今までのギャラリーにいてはできなかった質の展覧会ができて楽しかったです。
今後も、「現代美術」の枠組みをストレッチしていけるような、柔軟な展覧会を定期的に開催、発信していきたいと思っています。そうすることで、自分が一緒に仕事をしている現代美術のアーティストの立ち位置も認識できるでしょうし、そこで相互交流が生まれ、新しい何かが生まれる場になれば嬉しいです。」(Satoko Oe Contemporary ギャラリスト大柄さん)
展示会情報
岩永忠すけ 「Evacuation」
会期:2017年6月24日(土)〜7月29日(土)
Satoko Oe Contempporary
東京都江東区白河3-18-8 第二杉田ビル1F
http://www.satokooe.com/
■HARMAS GALLERY
もともと印刷工場だった一軒家の一階を改装して作られたHARMAS GALLERY(アルマスギャラリー)。初めは展示スペースだったが、やがていい作家たちとの出会いもありギャラリーとなり、今に至る。20代から30代の、美術に対して真摯な態度で挑む美術作家を中心に紹介している。
「元々のスペースは清澄の隣の門前仲町だったので、次は美術館やギャラリーが多い清澄だなと決めていました。清澄白河のギャラリーコンプレックスが無くなってしまったことには驚きましたが、清澄という街自体に愛着があるので、ここにギャラリーを開いて良かったと思っています。
街自体にはコーヒー文化の台頭で人が増えており、展示を目指して来てくれる人もいらっしゃるのでとてもありがたく思っていますね。
所属アーティストに関しては美術に対して、文脈を一通り掴んだ上で制作しているか、作品に一点突破できる力があるか、というところが重要だと思っています。」(HARMAS GALLERY 八木さん)
展示会情報
東美貴子 個展
会期:未定(秋頃) ※詳細はHPにて発表
HARMAS GALLERY
東京都江東区清澄2-4-7
http://harmas.fabre-design.com/
■KANA KAWANISHI GALLERY
© Matej Andraž Vogrinčič, courtesey KANA KAWANISHI GALLERY
撮影:表恒匡
元は「カナカワニシアートオフィス」として、アーティストの作品集を欧米出版社に提案する仕事から始まったKANA KAWANISHI GALLERY(カナ・カワニシ・ギャラリー)。アーティストと話し合ううちに作品扱いも担当する必要性を感じ、アートフェアへの出展とギャラリーの新設(2017年に南麻布から移転)に踏み切った。
「大げさに聞こえるかも知れませんが、ギャラリーの運営は「人類の進化に貢献している」活動であると言えると思います。紹介するアーティストの作品は、個人的ではなく普遍的な主題を扱っていること、またその手法と視点が既出のものではなく、新しい独自の発見を持っていることを判断基準とし、これまでにみたことのない未踏の表現を常に求めています。国籍、年齢、それまでのキャリアはあまり考慮に入れていません。社会経験を経たアーティストは広い視野と鋭い現代感覚を持ち合わせていることが多い気もします。
清澄白河は東京都現代美術館が近い立地のためギャラリーが集まっており運営がしやすいですが、この街を選んだ決定打は街の雰囲気の良さと物件の佇まいの良さでした。
来廊者の方の多くが清澄全体のシーンを御覧になられている方々で、自転車などで回られる方も多くいらっしゃいます。そういう方に他の展覧会のご感想をお伺いし、アートシーンの存在を実感しながら運営するのは楽しいです。」(KANA KAWANISHI GALLERY ギャラリスト河西さん)
展示会情報
相澤安嗣志 個展「No Man’s Land」
会期:2017年8月14日(土)〜9月30日(土)
KANA KAWANISHI GALLERY
東京都江東区白河4-7-6
http://www.kanakawanishi.com/
■アートト
現代アートに対する理解を深めたい、いつかはアートに関わる仕事もしてみたいという人にぜひお勧めしたいのが、清澄白河にある現代アートのスクール、『アート ト』だ。クーポン制で1コマずつ受けることができるクラスから、12~24回のコースで体系的に学べるクラスまで選択肢が広いのが嬉しい。主宰者の小澤氏は地元の森下在住。15年間「AIT/エイト」にて現代アートの講座のプログラム制作と講義を担当。数々の展覧会のキュレーターやディレクターも務め、現在改築中の現代美術館のMOTサテライト展にも関わっている。
「美術のオタクを育てるつもりはなくて、美術を通して今の時代を探る話などもしています。ゲスト講師が結構来るので、現場で働いている人の生の声も聞けるのがよいと思います」(小澤さん)
『アート ト』ではヨガクラスも開催。ハードではないヨガをレクチャーしてくれる。女性限定だが、男性が参加できる日曜日の朝のクラス(7:30~8:45)もスタート。
アートト
東京都江東区高橋7-5 酒井ビル2F
http://www.artto.jp/
■最後に…
取材させていただいた方々にお気に入りアドレスを伺いました。清澄白河でギャラリー巡りの際には是非立ち寄ってみてください。
▼EARTH+GALLERY 加藤さんのお気に入りアドレス
アンドーギャラリー
http://www.andogallery.co.jp/
東京都江東区平野3-3-6
ブルーボトルコーヒー 清澄白河ロースタリー&カフェ
https://bluebottlecoffee.jp/cafes/kiyosumi
東京都江東区平野1-4-8
▼Satoko Oe Contemporary ギャラリスト大柄さんのお気に入りアドレス
引き出しカフェ
https://tabelog.com/tokyo/A1313/A131303/13169709/
東京都江東区白河3-8-5
TEAPOND
http://www.teapond.jp/
東京都江東区白河1-1-11
▼アートト 小澤さんのお気に入りアドレス
The Northwave Coffee
https://www.facebook.com/TheNorthWaveCoffee
東京都江東区高橋14-24
▼編集部お気に入りアドレス
ALLPRESS ESPRESSO
https://jp.allpressespresso.com/
東京都江東区平野3-7-2
writer: Atelier506